過去ログ - 俺の妹がこんなに可愛いわけがないSSスレ Part.9
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897: ◆Neko./AmS6[sage saga]
2011/05/03(火) 20:36:25.24 ID:fK0gY2ago

あやせとの結婚を目前にしていたあの頃、俺は憂鬱な日々を送っていた。
いわゆるマリッジブルーっていうものなんだろうな。
ずっと想い続けたあやせと結婚できるんだ、そう自分自身に言い聞かせていたんだ。

「お兄さん、トイレなんか共同でもいいじゃないですか。
 お風呂だって三日に一度くらい銭湯に行かせてもらえれば、それで十分です」

あやせは当初、俺の安月給を慮ってそう言ってくれたんだろうが、
幾ら甲斐性のない俺でも、あやせにそんな惨めな思いはさせられねえだろ。
潔癖症のあやせが、風呂を三日に一度なんて耐えられるわけがねえ。
俺は死に物狂いで不動産屋を駆けずり回って、ようやく今のアパートを見つけた。
新婚生活が、こんな惨めなアパートからスタートするなんて夢にも思わなかったよ。
それでもあやせは、だるまクレンザーで台所の錆を落としたり、
すっかり日に焼けて変色しちまった畳に何度も雑巾を掛けてくれた。
あんなに綺麗だったあやせの手にアカギレを見つけたときは、俺は心底哀しかった。

「あやせ、幾ら拭いたって、それ以上は綺麗になんねえよ。
 ……あとは俺がやっておくから、あやせは少し休んでいてくれ、な」
「お兄さんに、水仕事なんかさせられませんって。
 これは妻であるわたしの役目なんですから。お兄さんこそ休んでいてください」

あやせはバケツで丁寧に雑巾をすすぐと、笑顔でまた畳を拭きだした。
その様子を部屋の隅で見ていた俺は、なぜだか涙が溢れて止まらなかった。
あやせがなぜ俺なんかと結婚してくれたかなんて、今更語るのも野暮ってモンだし、
それに正直言って俺自身も良く分からなかった。


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