過去ログ - 男「また、あした」
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118:>>1[saga]
2011/05/17(火) 21:09:30.27 ID:eMv9cKCj0
「お酒臭いです」
「お酒、だからね」

冬森さんのあまりに余りな当たり前なことを言われて、思わず苦笑しながらチューハイを口にした。なるほど、お酒臭い。
すぐにグレープフルーツの味がやってくるが、お酒って苦いものらしい。オマケにグレープフルーツなものだから後味が当然苦い。
これは少しばかりハズレを引いてしまったようだ。思わず顔を顰めるが、買ってしまったのだから諦めて飲むしかない。

「んー……合う、のかな」

チータラをつまんでみる。別に何か特別美味しく感じるわけでもないような。チョイスが間違ったのか、こういうものなのか。
いまいち区別がつかないけれど、でも所謂おつまみを僕は選んだんだけどなぁ。

「わかりませんねぇ……」

冬森さんも楊枝にささったチクワを口に運んで、梅酒を一口飲んで、僅かに首を傾げた。
僕ももう一度挑戦してみるが、なんというか、この手の果実系のフレーバーとこのオツマミ達があんまり合わないような気がする。
でも、なんとなく手が伸びていく。正直、あんまり美味しくないような気もするんだけど。妙に後を引く。
グレープフルーツとアルコールの苦味にも慣れてきたらジュースのような感覚だ。元々炭酸はあまり強くないので、飲むのに時間はかかるが。
それでも、気付けば割と飲んでいる。見れば冬森さんもそんな感じで、何故だか二人して口数は減っていった。

 *

やられた、と思ったのはお酒の残りが少なくなってきたころ。三分の二程飲んだところで、ついに酔いが回ってきた。
なんというか、ひどくボーッとする。熱に浮かされているような感覚だ。実際、体温はいつもより高いと思う。

「……飲みきっちゃいました」

冬森さんは僕の目の前で梅酒を飲みきった。高潮した顔で虚ろに僕を見つめている。目が潤んでいて、唇は濡れて艶っぽい光沢を放っている。
ひどく蟲惑的だ。どきり、とはした。酒で酔った勢い、というのもよく聞く話である。聞く話ではあるが――。


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