132: ◆hwowIh89qo
2011/07/08(金) 23:31:56.99 ID:ll8QhN4I0
こうまで冬森さんが固執するならば、何か思うところがあってのことだろう。
あまり思い出したくない事柄でもあるけれど、他ならない恋人の願いでもあるのだ。
それに、彼女になら僕の傷を見せるのだっていいような、そんな気もする。
「わかったよ。でも長くなりそうだね。お菓子でも食べながら、ゆっくりいこう」
「そう、ですね。それで、秋川君はトースト、チャレンジしてみますか?」
冬森さんがメニューを広げて、ソレの写真を指差しながら言う。彼女の細い指先が示すその写真には、なかなかにおぞましいものが写っていた。
悪ふざけの総動員、ジュピトリス・トースト。ただのトーストとは訳が違う。なんというか、いろいろひどい。
使う食パンの量は一斤の半分。バニラアイスは巨大な丸い塊がみ三つほど。その上にチョコソースをアホみたいにかけて、さらにその上には生クリームをでっぷりと落す。
クリームの上にこんどはキャラメルソースをくまなくかける。そしてチョコプレッツェルを五本ほどクリームにさしたら完成。
トーストの壁面にクリームを塗るのもお忘れなく、といった感じかな。うわぁ。胸焼けがすること必須であろう。
「……ごめん、あんなこといっといてなんだけど、無理」
メニューの写真で得られる情報だけでこれだけあるのだから、実物はもっと何か隠されているとみていい。
というか、なんだこの一発で糖尿病コースは。というかこれは美味しそうなのか。この甘味の塊は。頼む人、いるんだろうか。
「流石にこれは厳しそうですね……。あ、私は予定通りミルフィーユにします」
「じゃあ僕は……いつもどおりチョコサンデーでいいや」
やっぱり、ジュピトリスといえばチョコサンデーだろう。僕が知っている限りでは、一番美味しいサンデーを作る店だ、ここは。
店長が異様なまでにロボットアニメファンだからイロモノにみられがちだけど、味はしっかりしている。
注文を済ませると、少しばかりの沈黙が僕らを包んだ。彼女は話を切り出すタイミングを、僕はどういう姿勢で聞けばいいのかを考えているといったところだ。
僕らのトラウマというのは、一朝一夕でなんとかなるものではない。僕らは互いに依存し合う関係ではあるけれど、異性に対する恐怖なんていうのは消えてはいない。
冬森さんが一切恐ろしくないのか、といえば嘘だ。女性という生物は大概打算的でエゴが強く、切捨て、裏切りに一切の躊躇をしないというのが僕の女性観な訳だ。
それに、今の社会のシステムは多くの場合、女性に有利なようにできている。男尊女卑の時代は殆ど払拭されたといっていいだろう。
古来から続く仕事なんかだと、多少は引きずっているかもしれない。しかし、それ以外では制度の改正や法整備の充実から、女性というのは強い存在となった。
そうして、それは今加熱しすぎている面がある。痴漢冤罪といったものがそうだ。何も証拠がなくとも、女性が適当な男性を痴漢だと宣言すればたちまちに彼は犯罪者となる。
取調べにおいて、証拠が出てこなくても――ひどいときには、そもそもその女性を触れる位置に彼が居なかったとしても有罪となってしまうのだという。
行き過ぎた女性擁護の発想が、悪魔のような女性を生み出したといっていい。
223Res/233.21 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。