196: ◆i0ckv/cjPwVF[これでどうだ。無意味にスペース連打!]
2012/01/28(土) 21:11:24.14 ID:1bve/6vv0
おずおずと、彼女は少し気恥ずかしそうに手を伸ばしてきた。
僕はその手をそっと握る。うん。僕らはこうして手を繋ぐだけでもどこか気後れを感じるようなカップルなんだ。
今朝方僕が見たような夢が実現するのはもう何年か後の話になるだろう。
だから、早く忘れるんだ僕。可及的速やかに且つ迅速に、だ。
「手、冷たいね」
「あ、手袋、忘れてきちゃって……。でも、秋川君の手、あったかいです」
「そっか。それは良かった」
小さく笑いあって、歩き出す。うん。いきなりいい感じじゃないだろうか。
僕らは、どこに出しても恥かしくないような、小さなカップルだろう。
*
バスでしばらく行ったところに、規模は小さいながらも立派な美術館がある。
彼女はバスから降りて、周囲を一瞥するなり、感嘆の声をあげた。
「わぁ……思えば、久しぶりに来ました」
「冬森さんも、以前に?」
なんだかんだ、ここに僕ら二人でくるのは初めてのことである。
冬森さんは来たことがないだろう、と勝手に思い込んでいたが……。
「はい。秋川君の絵と、初めて出会った場所です」
「そういえば、一年生のころに言っていたね。そうか、ここか」
「はい。何て素敵な絵を描くんだろう……って。感動しました」
「そう正面きって言われると、少し照れるかな……」
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