23:>>1[saga]
2011/03/28(月) 22:40:43.69 ID:gJVBoKdj0
「目標は文化祭だね」
「いいものができたらいいです、よね」
「やる以上はそれを目指していこう」
僕は早速画材一式を取り出してイラストを起こしにかかった。今日のところはひとまず下描きになる。
それで全体的なイメージを掴み、実際のイラストになるのは明日か明後日か。
僕自身遅筆な性質なので冬森さんに悪い気もするが、こればかりは僕の性分なので諦めてもらう他ない。
僕はなんだか黙って描いているというのもなんだか気まずい気もしたので、再び机に向かい原稿用紙と格闘しだした冬森さんに話しかけることにした。
「冬森さん、甘いものが好きだって聞いたけど」
「はい? え、ああ。うん。好きなんです。秋川君も、そうらしいですね」
「まあね。大好物なんだけど、この辺りでいいお菓子屋さんを知らないかな」
「あ。なら、風鈴堂ってお店が、美味しいんですよ」
その店舗名には聞いたことがあった。というより、良く行く店ベストテンぐらいには入る。これで好みまで一緒だったりして。
「そこなら知ってる。冬森さんは何が好きかな」
「あ。知ってるんですか? あそこ、隠れた名店なんですけど。そうですね、私はー……風鈴堂特製加寿帝良が好きで。行くたびに買ってるんですよ」
「あそこのカステラか。いいね、僕もよく買うよ。あれもいいけど、僕は風鈴最中が好きだな。少し小さめで食べやすいし、数もあって安いし。理想系かな」
「モナカですか。いいですね、私も大好きなんですよ」
なんだかすごく話が弾むじゃないか。同好の志とはこうも話しやすいものか。何で今まで真っ先にこの話題を出せなかったんだ、僕。
それに絵の調子も悪くない。まだ下描きとはいえここまでのスピードで描けているのは自己新記録だ。それに何だか気分もいいぞ。
異性との会話でここまで話が楽しいのは初めてかもしれない。
僕が仮面気味に浮かべていた曖昧な笑みもいつしか心からの笑みへと変化していることも自覚できる。
彼女もそれは同様なようで、何だかお菓子の話一つでえらく打ち解けたような気すらしてくる。
甘いものの力って偉大なのだと思わず感心してしまうぐらいだ。いや、間違いなく偉大なのである。うん、と僕は心の中で大きく頷いた。
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