55:>>1[saga]
2011/04/01(金) 21:01:38.15 ID:OpoHLyR10
冬森さんからのメールがこないまま、三週間近く経過した。
流石に渡された分は全部描き上げてしまっているし、なにより夏休みの終りがいい加減見えてきた。さらに言えば心配にもなる。
何かあったのか聞こうと思ったけど、変なプレッシャーになってもまずいとそれもできずにいた。焦燥感だけが募っていくなか、無情にも時は過ぎていく。
文化祭までは夏休み明けからまだ一週間は猶予がある。まだ時間はある。まだ。しかし、それにしたって、モノが完成しなければどうにもならない。
冬森さんが一体どういう状況にあるのかどうにか知りたかったけれど、彼女と一番親しいであろう春野さんのアドレスは知らず、夏原は論外だ。
彼がその手の事情を知っているなら僕に知らせるだろう。結局のところ、僕にできるのは待ちの一手。
いくら僕が焦ろうと気を揉もうと、それは何物にも影響しようがない。
僕は己の不安に上書きするように積もった課題を崩し始めた。鳴りもしない着信音が聞こえるように、机の上に携帯電話を投げ出して。
*
ついには、何の連絡がないまま夏休みは終わってしまった。
始業式の今日、本人に聞こうとするも本人を見つけることはできなかった。
放課後、僕と春野さんはお互いを見合わせて言った。
「雪花はどうしたの?」
「冬森さんはどうかしたの?」
「知らないの? 秋川君」
「春野さんこそ、知らないんですか?」
「なんだ、二人とも」
そこに夏原が話に加わったが、三人が三人とも、冬森さんの動向を知らなかった。
さらにいえば、春野さんもずっと連絡がつかないらしい。とりあえずは、春野さんが今日、冬森さんの家に向かい、確認してみるとのことなので僕らは引き下がることにした。
目に見えて動揺している僕に夏原が何か言っていたハズだが、僕の耳にソレは入ってこなかった。
順調に見えた、この絵本部に何か問題が発生している。
ゴールである、文化祭での部誌の販売。これが根本的な部分でできなくなろうとしているのだ。
しかもそれは、僕の力ではどうにもならないこと。
僕はどうにも気分が悪いような気持ちで、全身が冷たくなるような錯覚の中、何も出来ず、非力な己を悔やんでいた。
僕は今日一日、どうにも落ち着かずに、眠れない夜を過ごした。
何をしても、心臓を押しつぶすように不安の念が押し寄せてくる。
僕はどこかで何かを間違えたのか?
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