過去ログ - 男「また、あした」
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58:>>1[saga]
2011/04/01(金) 21:09:18.93 ID:OpoHLyR10
 気がつけば、市内の中心部にたどりついていた。
冬森さんの姿がまだ見えない。ここまで走って見えないなら、見当違いの場所にいるのかもしれない。
冬森さんの場所がわかって走っていたわけでもないんだ。その可能性は十分考えられる。
一旦、夏原と連絡を取ろうと携帯電話を取り出そうと――そう、したとき。
はっきりと、彼女の姿が見えた。ビルとの隙間にある、細い路地裏。黒い影が彼女を取り囲むようにしている。何やらひどく揉めているらしい。
言葉は聞えてこないが、彼女の表情が恐怖で強張っているのがわかる。彼女を取り囲む影について僕の脳は認識を阻害した。認めたくないらしい。
僕がしようとしている行動に、全力で反対しているらしかった。
でも、行動に移さなければ僕は一生を後悔し、絵を描くことなどできなくなるだろう。
そんなの、嫌だ。夏原に連絡したら、向かわなければはならない。どんな結末になろうとも。
携帯を開いて、夏原を呼び出す。彼が出たのを確認して、こう言った。

「夏原。用件だけ言うね。末松ビルの間にいるよ。骨は拾ってね」

返答を聞かずに携帯を切る。
僕は、ギリギリまで警鐘を鳴らす脳を無視して、冬森さんのところへ向かった。
話してほしいことが、沢山ある。話してやりたいことが、とてもある。だから、怖がっていちゃいられない。
骨は、夏原が拾ってくれる。心配することは何も無い。僕は、息が少し整うのを待って、路地裏に歩を進めた。

「僕の連れに、何か御用でしたか」

僕が声をかけた黒い影。それは、とても恐ろしい三人程の不良たちである。
かっこいいのかどうか知らないけど、髪を金に染めて、ピアスに、変な模様がぶら下がったネックレス。服装はだらしない。
よく見ないと同じ学校だともわからないほどだ。なるほど、異種たる人間だろう。敵いそうに無い。

「お前には関係ないだろ。引っ込んでろ」

その内の一人に、いいのを顔にもらった。思わずよろける。でも、まだ倒れない。冬森さんを逃がすまでは、倒れない。立ち往生が理想系だろう。

「秋川君!?」

冬森さんが眼を白黒させて、どうしてここにいるの、といった様子で声をあげる。
でも、今の僕はそれを返す余裕はない。僕は、君の身代わりにきたんだよ。助けるため、とは言い切れない。
君を逃がすため。そのためのスケープゴートに僕はなりにきた。


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