78:>>1[saga]
2011/04/03(日) 23:04:28.89 ID:hebi0UqT0
翌日。
今日で製作自体は終わりそうだ、と夏原と春野さんに伝えると、そういうことなら帰ると夏原はわざわざ課題をもらって帰ると言い出した。
それに同調するように、春野さんもそれなら完成したら先生と一緒に印刷所にいくから、生徒会室に着て、と生徒会に向かっていった。
たぶんどちらかの働きかけで僕と冬森さんを二人きりにするよう図ったのかもしれない。本当に、面白がってるんだからなぁ。
まぁ、とりあえず描くことには変わり無い。気を取り直していこう。
そんなわけで、部室。
昨日約束した通り、まず後絵のデザインを二人で考える運びになった。
締めの絵であるわけだから、一枚で完結している絵にならなければならないということでは一致こそしたものの、肝心の何をどういう風に描くかという点においては有効な意見が出てこなかった。
どうもしっくりするものがない。
「女の子を正面にもってくるとしても、背景をどうするかな」
「背景……右と左に分けてしまうのはどうでしょう」
「分割して? どういう意味が?」
「左側にお菓子の世界、右側に現実を。どうでしょうか」
冬森さんの提案するその案を頭の中に思い浮かべる。
方やカラフルで温もりがあり、方やモノクロで冷たさがある。境目はハッキリと。なるほど、悪くない。
「じゃあ……それでいってみようかな」
「なら、見ていますね」
「結構細かくなりそうだから、一日仕事だね」
付きあわすのも気の毒な気がするのだが、本人が見ていたいというのだから仕方が無い。
実際問題、僕の頭の中に浮かんだ構図だと背景がとても細かいので、とりあえずは中央にくる女の子を大きく描いて、背景は描きながら考えることにした。
そうすれば、簡略化できるところとか、別に描かなくても大丈夫そうなところとかが見えてくると思うし。
しかし、どうも人を待たせるというのはどこか心苦しい。特に冬森さんがそれを苦だと感じていなくてもだ。
何故か仄かな罪悪感じみたものを感じずにはいられない。
「文化祭が終わったら、打ち上げがしたいね」
「打ち上げ。いいですね。四人で」
用紙を広げて、ペンを走らせる。それと同時に、とりとめもないことを話し始めた。
今から終わった後の話というのも気が早いと言う気もするし、そもそも祝う気分でいられるのかが問題だ。
作るのが最終目標に近かっただけに、印刷して売るとなるとどうなるものか。
春野さんのネムバリューで売り出すにしても限度ってものがある気がする。
元々、大した部数を刷るつもりはなく、半分売れればいいやぐらいの気でもいるのだが。
「流石に甘いものばかりというのも二人には酷だろうからさ、普通のお店でさ」
「そうなると、打ち上げの定番どころですよね。焼肉屋さんとか。苦手ですけど」
焼肉。どうも苦手な熟語だ。何も僕が菜食主義というわけではなく、焼肉のお店は焼肉とそれに関係するものしかないのでどうしても油っぽい食事にならざるを得ないわけで。
なんか色々胸焼けを起こしそうだ。小食なんだよ、僕。
「もうちょっとバリエーションがあったほうがいいね。食べ放題のお店?」
「でも、夏原君しかいっぱい食べられそうな人いませんよ?」
言われて見ればもっともである。女の子である冬森さんと春野さんは言わずもがな。僕は前述したように食は細い。
夏原はあの筋肉を維持するために大量に食らうだろうが、それでも僕らの分まで元が取れるとは考えずらい。
無理に元を取ろうとする必要は無いが、元を取りたくなるのがケチな小市民の性とでも言えよう。
「ファミレスかなんかで、小規模に騒ぐのが僕らには合っているのかな」
「学生なんですから、お祝いも弁えませんと」
そう言う冬森さんはどこか楽しげだった。まぁ、ファミレスのデザートも美味しいところが増えてきているらしいし、それに経済的にもファミレスのがお得だ。
夏原や春野さんがどう出てくるかはわからないが、特に何かあるわけでもないだろう。
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