過去ログ - モダンブレイバー 〜三人のこと〜
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20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/04/01(金) 05:51:49.01 ID:oA15g2f/o

 不幸とはすなわち欠落だ。
 あってしかるべきものがそこにないこと。それが不幸だ。
 欲していたものがそこにないこと。それも不幸だ。

 心に隙間ができると、あたかも隙間風のようにそこに不幸が忍び込む。
 ならば俺は俺もきっと――そうなのだろう。
 むなしく、認めた。

 規則正しい電子音が鼓膜を叩いている。
 あまり大きい音でもないのに、なぜだかとても煩わしい。
 だが、それは彼女が確かに生きていることの証明だ。ならば甘んじて受け入れるべきだった。

「……」

 白い天井、白い壁、白いシーツ、彼女の白い頬。
 例の女と出会った光あふれるようなあの場所と違い、ここはどこかうす暗い。
 薄暗がりの中、俺はベッドで昏々と眠る彼女の瞼を見つめていた。

「……」

 彼女の顔には、生きている人間が纏うべき雰囲気がなかった。瞼が動く予兆はなかった。
 彼女は眠り続ける。
 これまでも。そしてこれからも。

 俺は思考の扉を閉じると、ベッド脇の椅子に座ったまま彼女の頭に手を伸ばした。
 だが触れる前に病室のドアが引きあけられ、俺は手を引っ込める。

「あ……」

 振り向くと、ドアを開けた格好のまま立ち尽くすスーツ姿の男が目に入った。



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