過去ログ - 騎士見習い「もう疲れたよ……」
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162:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/05/01(日) 12:15:00.42 ID:4dmodQwko

 金野原の国。≪大いなる陸地≫における最大の農業国である。
 剣の王国の南西に位置し、群れの国に次いで広い国土。
 より南にあることもあり、いくぶんか暖かい。
 土地も広きにわたって多分に天の恵みを授かっており、この国が農業大国としての地位を築く要因となっている。

 収穫期の金野原の国には一面たわわに実った小麦の穂が風にそよぎ、その国名の通り金色の原を成すことで有名だ。
 今はまだ春の初めであり、秋まき小麦でもまだ金野原を作るには至っていないものの、農地には青い穂がさわやかに揺れていた。
 それもまた美しい景色には違いない。
 その脇で小屋がいくつか焼け落ち煙――馬車から見えたのはこれだろう――を上げていてはそれどころではないだろうが。

 小屋は農夫の大事な財産の内の一つだ。
 中の農業道具を風雨で朽ちさせないように粗末ながらも丈夫に作ってある。
 それがなくなってしまえば不便を強いられるのは間違いないし、農夫は嘆くはずだ。命があれば。

 農地に隣接する村――剣国の一般的な村よりもだいぶ規模が大きい――も、少なくない被害を受けていた。
 村を囲う柵は乱暴に押し倒されていたし、村の中にも火を放たれた家屋がちらほら見られ、全焼は免れているものの傷みは激しい。
 その玄関先で呆然と立っているのは、それでもまだ運の良い人々である。
 道端にうずくまっている人影も見えた。

「こりゃ、いくらか死んでるんじゃないか」

 驚いた顔でしかし縁起でもない事をつぶやく相棒だが、それはよほどのことがない限り間違っていないように思えた。



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