36:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/04/02(土) 21:03:37.44 ID:rVhEFPKqo
時は戻って現在。剣の王都。
「昇進。そのために連れてきたっつーのに……」
相棒が寮の二人部屋のドアを開ける。
すると、二つあるベッドの内の一つにちょこんと腰かけた、簡素なワンピースドレスの少女がびくりとこちらを向いた。
クリアという名の少女は言いつけ通り、こんな狭く男くさい部屋でもちゃんと待っていたようだ。
たとえ逃げたところで行き先がないというのが実情だろうが。
彼女を他の寮生に見つからないようにここに入れるのにはかなり苦労した。
まあいったん入れてしまえば誰かが勝手にここに立ち入ることはないから、安心できるが。
アロー家子息の機嫌を損ねるような馬鹿をやる奴はそうそういない。
それよりも山から引っ張ってくるのが骨だった。
彼女は無理やり連れて来ることにはそれほど抵抗しなかったが、なにしろ体力がなかった。
館で見つけた地図から計算すればさほどかからない帰還が、彼女を加えることでおよそ二倍に延びたのだ。
「苦労した分の見返りぐらいあるべきだと思うんだがな」
怯える少女を睨んで追い打ちに威嚇すると、相棒は次にその目でウィリアムを刺した。
「さあて、説明してもらおうじゃねえか。どうしてこいつを庇うようなことをしやがる? え?
まさか、こいつに情でも移ったか? お前は面がよけりゃ得体の知れねえ奴でもいいってのか? あん?」
「この子には同情するけど庇ったつもりはないよ。僕だって誰かさんのせいでただクビになるだなんてまっぴらごめんだからね」
「ウィィィィル……言うようになったじゃねえかお前。よほど血の海で泳ぎたいと見えるな」
相棒の視線がさらに険しくなった。
「確かに水遊びは好きだったけどね、君のお世話にだけはなりたくないな」
「遠慮するなよ、俺は今サイコーにゴキゲンなんだ」
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