38:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/04/02(土) 21:06:16.14 ID:rVhEFPKqo
自分たちでそれを成し遂げてしまえば、確かに上がそれを横取りする隙はなくなる。
そうなれば自分たちは若くして重役、のはずだった。
相棒の手がようやく柄を離れた。
心の中でかいた大量の冷汗をぬぐいつつ(なれないことはするもんじゃない)、ウィリアムは微笑んで見せた。
「もし成功すれば騎士団に戻れるだけじゃないよ」
「幹部の椅子も狙えるかもな」
相棒はにやりと笑うと、すっかり機嫌を直して部屋の外に出ていった。おおかた酒場にでも行くのだろう。
部屋の空気が軽くなった。
「ぷはっ! こ、怖かった……!」
「っ……」
いきなり脱力して壁に寄りかかるウィリアムに、驚いた少女が肩を震わせた。
深呼吸数回ののちに、少女の視線に気付いて彼は苦笑した。
「いや、そんなに怖がられてもね……ロックならいざ知らず、僕けっこう弱いし」
「……」
彼女が顔を伏せるのを見ながら、ため息をついて天井を仰いだ。
ぽつり、とつぶやく。
「――ごめん」
「……?」
おそるおそる、といった様子で少女が再び顔を上げる気配がする。
「気の毒に思うよ。彼、自分が良ければ他人の都合なんて考えないで突っ走るところがあってさ。
なんとか止めようと思ったけど、僕じゃ無理だった。頭だけはそれなりにいいはずなんだけれどね。
やっぱり度胸が足りないみたいだ。
即研究対象物って事態は避けられたのは確かだけど」
「……」
「君には君の生活があったのに、こんなことになってしまった。本当にごめん。
なんとかうやむやにして君を元の場所に返せるようにするよ。その、ちょっとだけ我慢してほしい」
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