過去ログ - 明るい魔まマ 魔法少女まどか☆マギカ 〜私の大切な人〜
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22:ちり紙 ◆B/tbuP0Myc[sage]
2011/04/03(日) 01:40:13.01 ID:8GUEOo26o
  第3話 「……本当に、一緒に戦ってくれるんですか?」

 「……まどかちゃん、もう目を開けていいよ」
  斜面の底で、芳文はまどかに話しかける。
 「……ここは?」
 「さっきの斜面の底。どうやらここには使い魔はいないみたいだ」
 「先輩、背中が……」
 「……ああ、滑り落ちる途中で引っかけたかな。それよりまどかちゃんはケガしてない?」
  芳文の背中は制服がボロボロに破れて、肌が露出して擦り傷や切り傷だらけだった。
 「わ、私は大丈夫です」
 「そうか、良かった」
 「せ、先輩、血が……」
 「大丈夫。見た目ほどダメージないから。後で巴さんに治してもらうから気にしないで」
 「……っ」
  まどかはハンカチを取り出すと、芳文の出血部を押さえる。
 「ごめんなさい……。私のせいで……」
 「君のせいなんかじゃない。気にしないでいいから」
 「……きっと、私が嘘吐きで弱虫だから、罰が当たったんです。先輩まで巻き込んで、こんな……」
  まどかはぽろぽろと涙を流して芳文に謝る。
 「泣かないで。君のせいなんかじゃないから……」
 「ごめんなさい、ごめんなさい……」
  芳文の言葉にまどかは泣きながら、謝り続けるのだった。

          ☆

 「……先輩、聞いてもいいですか?」
 「何かな?」
 「先輩はどうして、マミさんのお手伝いをしようと思ったんですか?」
  斜面の底で使い魔達から身を隠しながら、まどかと芳文はマミの到着を待っていた。
  まどかは芳文にずっと疑問に思っていた事を尋ねる。
 「ああ。そんな事か。巴さん達だけに全部押し付けて、見て見ぬふりをしたくなかったから」
 「先輩は願いをキュゥべえに叶えてもらったわけでもないのに、そんなケガをしてまでどうして……」
 「……願いか。……俺にはそんなものないな。あえて言うならただ、誰かの役に立ちたい。それだけかな。君は願いがあるのかい?」
 「……私は、何の取り柄も特技もないし、このまま色んな人に迷惑ばかりかけて生きていくのが嫌で、そんな自分を変えたくて……」
 「……それで、一度は魔法少女になろうと思ったのかい?」
 「だけど、やっぱり怖くなって……。私は弱虫で嘘吐きで……」
 「だったら、これからがんばって自分を変えればいいさ。わざわざ危険と隣り合わせの魔法少女になる必要なんかない。それに、君の身にもし何かあったらご両親が悲しむだろう?」
 「……はい」
  優しい家族の顔を思い出して、まどかは芳文に頷く。

 「大丈夫。すぐに巴さんが来る。絶対無事に家に帰してあげるから」
  芳文はそう言ってまどかを安心させようと微笑んでみせる。
 「……どうして、先輩はそんなに優しいんですか?」
 「……俺が?」
 「はい」
 「……俺は優しくなんかない」
  まどかの言葉に、芳文はつい自嘲気味に返してしまう。
 「……え?」
 「……俺は、たった一人の妹を見殺しにしたんだ」
 「せ、先輩……」
  異常な状況下の中で恐怖に怯えるまどかの手前強がってはいたものの、所詮芳文も一五歳の少年でしかなかった。
  今まで誰にも吐いた事のない呪詛を思わず吐き出してしまう。
 
 「俺はさ、いらない人間なんだよ。……俺さ、小さい頃に実の母親に捨てられてたんだ」
  自嘲気味に笑いながら芳文は幼い頃の事を思い出す。優しかった母親が、ある日突然冷たくなった日の事を。
  魔女の結界の中に成す術もなく閉じ込められ、どうする事も出来ない状況下の中で辛い思い出を思い出した芳文は、まるで吐き出すように言葉を繋ぐ。

 「何でも母親が記憶喪失になって倒れてた所を、親父が拾って面倒を見てるうちにお互い情が湧いて結婚して生まれたのが俺なんだってさ。いくつの時だったかな……」
 「ある日突然母親が冷たくなった。ふとしたきっかけで記憶が戻ったんだと。それで俺と親父ははい、さようならさ。こっちは記憶があろうがなかろうが母親だから、慕ってる訳。けど母親はなんて言ったと思う?」

  芳文は苦虫を噛み潰したような顔で吐き捨てる。今までずっと隠して生きてきた暗い感情が、異常な状況下に置かれた事で次々と口から湧いて出る。


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