19: ◆YwuD4TmTPM[saga]
2011/04/14(木) 22:15:20.93 ID:z22boMOd0
おおむね晴れている空の下、見滝原は午後半ばの流れへと移り変わっていた。
整然として、それでいて厳格な都市計画の下で建設されていた建築物の群れの間を、蠢くように人が行き来していく。
そんな見滝原の、駅前のデパート。
その中のフードコート内のベンチに、Dボゥイは腰掛けていた。
ベンチ前の通路を横切る人の群れ。少し向こうのショッピングモールで蠢く人だかり。
それらをぼんやりと眺めながら。
と、
「Dボゥイ」
声に振り向くと、アキがこちらに近づいてきている。
彼女はそのままこちらの隣に腰掛けると、片手ずつに持っていた紙コップの片方をこちらに渡した。
中に入っているのはコーヒーだ。近くのドリンクバーから調達してきたもののようで、温かい湯気と共に香ばしい薫りを放ってくる。
「ありがとう」
「どういたしまして」
礼を言いつつ受け取ると、一口ぶんだけ口をつけた。
じんわりした熱が、唇から舌、舌から喉、喉から胃へと伝わっていくが、やがてはそれもまた消えていく。
「……平和な街ね」
唐突にぼそりとアキが呟く。
横へと視線を走らせると、彼女は紙コップの中の真っ黒な水面をじっと見下ろしていた。
「ずっとここにいたら、ラダムの事も忘れてしまいそうなくらいに……」
「今の地球に、安全な場所なんかどこにもないさ」
眉尻を下げた表情で、アキは身体を縮こませた。猫背のまま爪先を立てながら、
「ごめんなさい。私たち、休暇でここに来たんじゃないものね。……本当なら、ここで一息つく暇も無いはずなのに」
一息。
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