2: ◆YwuD4TmTPM[saga]
2011/04/08(金) 22:50:32.67 ID:4JaEv9bJ0
「――戦わないのかい?」
白い生物がこちらに問いかける。
「――いいえ」
元より応える義理なんてなかったけれど。彼女は答えた。
「私の戦場は、ここじゃない」
全てを見限ったかのように。
全てに興味を失ったかのように。
素っ気無く言い捨てると、彼女は左手の盾を起動すると――忽然と消え失せた。
「……消えた? どういう仕掛けなんだろうね」
白い生物は訝しげに首を傾げたが、
「……ま、いいか。僕のノルマも達成できたし、そこら辺を気にしてもしょうがないよね」
きゅっぷぃ、と満足げに息を吐くと、白い生物もこの地球から去ろうとしかけて――
突如の爆発音に驚いて、振り向いた。
仮に岩を風で断ち割ったならば、このような音がするだろう。押し寄せた突風に押し流されないように踏ん張りながらも、その白い生物は音のした方角を見やる。
そして、目を見張った。といっても、そのような表情をすることはこの生物にはできないが。
そこに「ある」のは、魔女クリームヒルト=グレートヒェン。
全ての平和と救済を願った少女から生まれた絶望であり、最強にして最悪の魔女。
それはあらゆる生命を取り込み、自らの結界で共に幸せな夢を見ながら破滅させる。
この惑星の科学力では、ロクに対抗できるものなど存在していないはずの「それ」は。
今、大きく傾ぎ、亀裂の入ったその身体に悲鳴を上げていた。
――否。魔女だけではなかった。魔女が睨む視線の先、人間サイズのモノが空中で静止しながら対峙している。
それは、一言で言うならば鎧騎士だった。白く鋭角的な装甲に身を覆い、凶悪に尖った刃が両端についた槍で武装している。
魔女に比べるとはるかに小さいはずのそれは、やがて両腕を交差させた。 それに伴い、肩と腕の装甲がスライドして展開する。
そして――
ご、という唸りと共に、大気が振動した。
空間の歪みすら生じる程のエネルギーの渦に、魔女と騎士の間の空間は純粋な力のみが荒れ狂う力場と化していく。
「ボル――」
高揚に雄叫びを上げるように。
或いは悲痛に泣き叫ぶように。
白い騎士が吠える。
それに応えるように、母が泣く子をあやすように、魔女は騎士を抱きかかえるようにその触腕を伸ばし――
直後。限界まで凝縮されたエネルギーの渦が吠えた。
騎士の叫びと共に。
「テッカァァァーーーーーッ!!!」
一瞬という時間を以て、発された力の奔流は。
弾ける光と共に、魔女と騎士を包み込んだ。
――これは、既に終わってしまった物語。
暁美ほむらが諦めた物語。
故に、次の話を始めよう。
魔を手繰る少女たちと、宇宙を駆ける騎士。
呪われた宿命を背負った者たちの運命が、ここに交差する――
1002Res/570.00 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。