21: ◆YwuD4TmTPM[saga]
2011/04/14(木) 22:22:47.53 ID:z22boMOd0
『――けて――』
『――助けて!』
拡声器か何かで叫ぶような、耳をつんざくほど大きな声ではない。むしろ、声の大きさそのものはささやきにも似た微弱なものだ。
だが、それははっきりと聞こえてきた。
「どうしたの、Dボゥイ?」
こちらの変化を悟ってだろう。アキが訝しげに尋ねてくる。
「……いや」
首を傾げながら、ゆっくりと周囲を見渡す。
(……気のせいだったのか?)
だが、その疑念はすぐに否定された。
『助けて!』
がたり、と――
立ち上がったのは無論、Dボゥイだった。
「ねえ、どうしたの? Dボゥイ」
さっきよりも不安の色を少しだけ強くにじませて、アキ。
「声が聞こえる」
「声?」
「……いや、『感じる』と言った方が近いな」
耳に当てていた手を離す。先ほど聞いた時から当てていた手だ。
本来なら聴覚を阻害するはずのそれを、だが全く意に介することなく『声』は変わらずにDボゥイにささやき続けていた。
「テレパシー? ひょっとしてラダムの……?」
「いや、そこまではまだわからない。どうも、助けを求めているみたいだったが……」
そこまで言って、再び声が聞こえた。
先ほどよりも強い声だ。
『助けて! ――まどかっ!』
反射的に或る方向を睨むと、Dボゥイは走り出した。
「こっちだ!」
「わ、わかるの?」
「なんとなく、としか言えないが……!」
かくして、二人は走り出した。
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