28: ◆YwuD4TmTPM[saga]
2011/04/14(木) 23:30:57.18 ID:z22boMOd0
ぐらぐらと身体が揺れる。倒れまいと踏ん張ろうとしたけれど、硬い地面が見つからなかった。自分の足がなくなってしまったのか、はたまたわたしの知らない間に地球がなくなってしまったのか。
ようやく視力が回復すると、まどかは自分が尻餅をついているのだと気づいた。目を瞬かせながら、きょろきょろと首を回すと――
周囲の状況は一変していた。
鉄のフェンスだったモノは圧縮されたようにひしゃげた形に変わり。
壁は、クレヨンの落書きのように不自然に歪んだ色をしている。
地面は油の油膜のようにぐにゃぐにゃとした光沢をしていて、触ると絵の具のようにぬめぬめとしていた。
……虹の色を、ここまで醜悪に感じたのは、生まれて初めてだった。
「な、に……これ」
唾が絡んでまともに動かない喉を、意識を総動員して無理やり動かす。結果、気管がひりひりと痛んでしまうことになるが、この状況ではその痛みすらも有難かった。
そうでもなければ、目の前にいる――もしかしたら「ある」が正しかったのかもしれないけれど――モノに、圧倒されて思考さえ凍りついてしまいそうだったから。
それは化け物だった。そう呼称するだけで全てが事足りる。そんな化け物だった。
――カイゼル髭を生やした毛虫。
そんな言葉がまどかの脳裏をよぎる。馬鹿げていた。とびっきりに馬鹿げていた。
「な、何よ。何なのよ、これ!」
隣にいたさやかも似たような調子で、恐慌めいた声で叫ぶ。
「Dボゥイ! これって、もしかして……!」
「……いや、おそらく違う。こんな妙な小細工は、『奴ら』はやらない」
Dボゥイとアキの二人はというと、緊張しながらも落ち着いた様子だ。
ひょっとしたら、二人はこんな異常事態には慣れっこなんだろうか。
「Dボゥイ、さん……」
「下がってくれ、二人とも。……アキ。二人を頼む」
「ええ、でも気をつけて」
「大丈夫だ。遅れは取らない」
まどかとさやかの手を引きながら後退するアキに、Dボゥイは力強く頷いた。
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