30: ◆YwuD4TmTPM[saga]
2011/04/14(木) 23:58:21.77 ID:z22boMOd0
「ペガスは連れて行けない、だって?」
「そうだ」
聞き返すDボゥイに、彼は頷いた。
ハインリッヒ・フォン・フリーマン。Dボゥイたちの直属の上司にしてスペースナイツの長である男。
場所は、テキサス基地。
スペースナイツの総本部の、そのまた司令室だ。
「何故ですかチーフ。ペガスがいないとDボゥイは……」
「落ち着いてくれ、アキ。まずは私の話を聞いて欲しい」
「…………」
アキが口を閉ざしたことに頷くと、フリーマンは口を開く。
「まず、知っておいてもらいたいのは、今回の任務は隠密作戦、ということだ」
言って、フリーマンはこちらとアキの顔を交互に見やった。
「テッカマンエビルが、日本の見滝原へと単独で潜入している――この情報は、間違いの無い事実ではあるが……」
一息。
「この街は、現状ではラダムの危機には晒されていない。我々スペースナイツは、名目上は対ラダム専門のチームである以上、本来はラダム以外の理由を以て動くことができないのだ」
「だから隠密作戦か」
「そうだ」
再び頷くと、フリーマンは話を続けた。
「そのため、今回はDボゥイとアキに行動してもらう事となる。現状、最近のラダムの活動は沈静化しつつあるが、それでも余談を許さない以上全ての戦力を投入するわけにもいかない。
……だが、ペガスは忍び込ませるにはあまりにも無理難題が多い。そのため、今回においては同行を断念せざるを得ないのだ」
「でも、それじゃあ彼は戦えません」
かつてテッカマンダガーとの戦いで、自らのテッククリスタルを破損したDボゥイは、ペガスのサポートなくしてテックセットを行うことはできない。
それはつまり、エビルとの交戦は不可能である、ということに等しいのだ。
「無論、それに対する対策は打ってある。……Dボゥイ」
「…………」
いつになく真剣な表情で――この男が真剣でないときなど今までも、そしておそらくはこれからもない気はするが――こちらを見てくるフリーマンに、Dボゥイは何も言わずにその視線を正面から受け止めた。
「我々は、テッククリスタルをもう一つ所持している」
「――まさか、チーフ! それって――!」
「俺に、レイピアの……いや」
アキの言葉を遮って、発せられたDボゥイの声。
それは、背筋が震えるほど張り詰めた意志の力が込められていた。
「ミユキのクリスタルを使えと、それでテックセットを行えと、そういう事だな? チーフ」
「……そうだ」
「私は反対です!」
だんっ! と机を叩いてアキが身を乗り出す。
「あれは、彼女がたったひとつ、Dボゥイに遺してくれたものです! それを、こんな事で使ってしまっていいわけが――」
「了解した、チーフ」
「ちょっと、Dボゥイ!?」
再びこちらを遮ったDボゥイに、アキは怒りを込めた視線を向ける。
それでいいのかと。
たった一つ残された、妹の形見だというのに。
そんな事に使ってしまっていいのか、と。
「確かにそれ以外に手はなさそうだ。――それに」
ぐっと拳を握りこむ。手が血の気を失うほどに。
「……俺はラダムを滅ぼす。如何なる代償を払おうとだ」
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