921: ◆YwuD4TmTPM[saga]
2012/05/26(土) 22:58:16.34 ID:cFJySCaJ0
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杏子は回廊の上を走っていた。
流れていくモノトーンの中、空には黒い影がある。
それは、影の獣たちだった。それも、小型のそれらで編成されたそれだ。
「面倒だよなあ、おい!」
苦笑の息を吐きながら、杏子は手の中で槍の柄を滑らせる。
狙うのは、空を滑りながらこちらへと向かってくる二体だ。
しなやかな体躯に力を蓄え、杏子は槍の穂先を突き出した。
彼我の距離は約10メートル。本来ならば、届くことがあるはずがない距離だが、
「!」
狼のような姿をした影の獣が、眉間を貫かれたまま溶けて消える。
貫いた杏子の槍。それには、一つの変化があった。
槍が幾重にも分離し、多節となって長く伸びていたのだ。
だが、もう一匹はまだ生きている。風を巻きながら、杏子の後方から飛び込もうとした影の獣は、しかし。
「!?」
不意に生じた打撃によって、地面に叩きつけられた。
骨を砕き、肉を割る衝撃が脳天から足先へと貫通する。
「伸びるのは刃先だけじゃねえぞ?」
ニヤリと口の端に笑みを浮かべながら、杏子は先ほど影の獣を打ち据えたもの――槍の石突を戻した。
その視線は、潰した後の使い魔には既に向けられてはいない。
彼女が見据えているのは頭上。そこにいるのは、新手の使い魔たちだ。
その数、十五匹。
それだけではない。先ほどの一撃で感づかれたのか、より遠くから使い魔の群れが迫っている。
杏子はしかし、恐れを感じさせない笑みで応えた。
「照れちゃうねえ、どうも」
直後。一瞬だけ、遠くで光が走るのを杏子は見逃さなかった。
その色は、青。
青い魔法少女が、一直線に魔女へと向かっている。
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