過去ログ - レイラ「さようなら、真賀田博士」
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18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県)[saga]
2011/04/09(土) 04:01:15.35 ID:bjkclqc70
「まあ、こねこが?」
「うん、港に集まってるの。こないだフーコ先生のとこにシュレディンガーを連れていったとき、気になってお話してみたんだけど」
「なんて?」
「うーん、なんか……待ってる? みたいだった。仲間とか……リーダーみたいな……誰かを」
「猫にリーダー? ……わかった、これから、少し早く行ってママもお話してみるわ」
「うん!」
神浜港。昨日と同じ場所に、やはり数十匹のこねこが集まって、海の方へみーみーと鳴いていた。
「はわわ……とりあえず写真とっとこ」
タモツがいるので、キルミンを使うわけにはいかない。目線を低くして、こねこたちに近づいていく。
――ねえ、お話させて。
――何を待っているの?
ハルカの青い瞳が水面のように揺らめき、彼女は薄く微笑んで動きを止めた。
ネコ科のキルミンを持つリコは、ネコ流――目を合わせず、相手に興味もない素振りで近づく会話を試みる。
キルミンを使っているうちに、精神構造が種族の垣根を越えつつある彼女たちは、思考体系までも言語に依存する頻度が低くなっていた。
ナギサが、はっ、として顔を上げる。ほぼ同時に、リコとリムもぴくんと震え、姉妹は目を見合わせた。
「女王様?」
「うーん……船の中みたい」
「ネコの王様みたいなのが見えたかも」
そのとき、周辺の船に注意を促す汽笛を上げて、大きな客船が入港してきた。
こねこたちが一斉に物陰へ飛び込むなか、ハルカと視線を合わせている一匹だけは、黒い毛並みに浮かぶ金色の瞳を動かさなかった。
――……。
ハルカが船に視線を向け、ゆるりと腕を上げて、その威容を指し示す。
黒いこねこは首を振り、ふいと向きを変えて、仲間の潜む小屋の裏へ走り去った。
去り際に、ハルカの手に尻尾を触れさせて。
「ママ、みんな」
ドクトルの乗った鞄を脇に置いて、タモツが呼ばわる。「お話は終わったかい?」
「御子神ハルカ様、御子神タモツ様、御子神ユウキ博士ですね。お連れの方が、三名……でよろしいですか?
どうぞ。間もなく本船は、日本海へ航海を開始いたします」
タラップが収容されていくなか、黒い影が船へ向かって波止場を蹴った。
遅れて、いくらかの小さな影も続く。
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