過去ログ - レイラ「さようなら、真賀田博士」
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72:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県)[saga]
2011/04/10(日) 16:15:52.70 ID:+E5s1dll0

「この事件に、名探偵の出番はない――違いますか、栗本さん」

「さあ。わたしには――わかりません」

栗本其志雄は首を傾げ、わずかに下を向いて、はかなげに微笑む。表情が陰りを帯びた。

「あなたは、一体、誰なんです?」

「わたしは、真賀田四季――真賀田四季は、わたし――そして、僕は真賀田四季の兄で、透明人間でした。
 でも、それらはすべて、彼女に作られた記憶に過ぎない。わたしは、その記憶を与えられて作り上げられた、栗本其志雄という名前の一人の人間。
 それだけですよ」

「それが、真賀田博士が与えた、あなたの自己認識ですか」

栗本其志雄は答えない。

「もし、そうだというのなら。僕は彼女を許せない。決して彼女を許さない。
 ……だけどそうじゃない、栗本さん、あなたは既に、博士の赤い夢の中だけの存在じゃない、
 ……だって、あなたの料理には、あんなに暖かなこころが満ちていた」

栗本其志雄の微笑みが、かすかに揺らぐ。瞳に映る光が、波打つようにも見えた。



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