86: ◆tUNoJq4Lwk[saga]
2011/04/12(火) 20:16:40.30 ID:irie9aEZo
アメリカ西海岸・ワシントン州シアトル――
古いレンガの建物が立ち並ぶパイオニアスクエアのすぐ南にある巨大な建物を
少女は見上げていた。
セーフコフィールド。大リーグの野球チーム、シアトル・マリナーズの本拠地である。
ひんやりとした空気の中、青々とした天然芝の上に彼女は立った。
グラウンドではユニフォーム姿のメジャーリーガーたちが練習をしている。
一般の人々の中でも特に体格に恵まれた男たちの中で、それほど身体は大きくはないけれど、
その分一際強力なオーラを発する選手がいた。
彼の名は、イチロー。
イチローは彼女の姿を見ると、柔らかな笑顔を見せて歩み寄ってくる。
「やあ、キミだったのか」
突然の言葉に少女は戸惑う。
「どうして、私のことを」
「ここ最近、時空の乱れが大きくてね、誰かが時間を巻き戻していると思ったんだ。
まさかキミのような可愛らしい子だったなんて」
「可愛い、なんて……」
少女は屈託のないイチローの言葉に思わず目を伏せてしまう。
「僕とキミとは、会ったことがあるのかな?」
「いえ、こうして直接会うのは初めてです」
「そうか……」
「勝手なことを言ってごめんなさい。どうか、私に力を、貸してください」
「……」
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