11:アスカ「私なりの愛ってやつよ」
2011/04/13(水) 23:34:31.56 ID:nYXsbXrS0
僕はビタミン剤を唾液と共に流し込み、カステラの敷き紙に残った食べカスをちびちびと食べて
空腹を紛らわした。
トイレもないから、空のペットボトルに用を足していたけれど、それももう限界だろう。
まずいなぁ、目がぼやけてきた。
僕たちは学校で、セカンド・インパクトの体験談を担任から聞かされた事がある。
先生たちの世代は、水も食べ物も無い絶望的な状況を、なんとか耐え抜いたと語った。
飢えも貧困とも無縁に育った僕は、今一つピンとこない話ではあったけれど、今なら分かる。
食べ物がある有難み。もし無事にこの部屋から脱出した暁には、先生にお礼を言おうと思った。
こうなればもう、僕自身が問題の解決に向けて立ち上がるしかない。
どのような世界であろうとも、頼れるものは自分だけなんだから……。
○
決死の覚悟を決めた数分後に、食糧問題はあっさりと解決してしまった。
隣の部屋に移ったんだ。
ドアの向こうに現れた鏡面世界は、明らかに僕の部屋だった。
部屋の間取りが鏡映しのように逆ではあるものの、そこにあるのは間違いなく僕の部屋だ。
それならこのへやを僕が自由に使っても、悪いはずがない。
ドアを通りぬけて自室Aから自室Bへ踏み込んだ僕は、
二度と見ることはできないかもしれないと思っていたカステラとソーセージを見つけた。
ミネラルウォーターもある。
とりあえず魚肉ソーセージの皮をむき、三日ぶりの動物性たんぱく質を心ゆくまで味わった。
あれほどソーセージが美味しかったのは未だかつてなかった。
そのあとにデザートとしてカステラを一切れ食べた。
まるで生き返ったように力が漲ってくるのが感じられたよ。
僕は自室Bの窓から、さらに向こうの自室Cを眺めた。
自室D、自室E、自室F……自室∞というように、永遠に僕の部屋が続いているんじゃ
ないだろうか。
絶望的ではあったけれど、考えようによっては幸運と言える。
なぜならば、たとえこの部屋の食料を食べ尽くしたところで、
隣の部屋に移ればまたカステラとソーセージが手に入る。
栄養に偏りはあるけれど、それでも餓死だけは避けられるからね。
それにしても、アスカがくれたカステラによって得られる栄養分は無視できない。
二年生の春に不本意な出会いを果たして以来半年間、切るに切れない腐れ縁だったアスカ。
ここにきて、彼女の存在が初めて役立った。
○
NERV加入後の数カ月は、<戦術作戦部>の活動で終わった。
既に述べたけれど、<戦術作戦部>なる組織の目的は、正体不明の「使徒」と呼ばれる生物を根絶やしにすべく、
ロボットを操縦するパイロットを徴兵し、戦地に送り出すことだった。
必要とあらば非人道的手段に訴えることも辞さない。
というか、人道的な手段でパイロットになった人間なんて、見た事がない。
僕が良い例だ。
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