14:アスカ「私なりの愛ってやつよ」
2011/04/13(水) 23:39:01.45 ID:nYXsbXrS0
振り返ってドアを閉めながら、
「ごめんなさいね」
と言い、ニヤリと笑った。
○
二日ほど、僕は自室Aから自室Fの間をウロウロして暮らした。
事態は好転しなかった。
それまでは自室に好きで籠っていたけれど、いつでも外へ出る事ができるという安心感があった。
ドアを開ければリビングへ通じる廊下があり、リビングを抜ければ玄関があり、
玄関を抜ければマンションから外へ出る事ができる。
いつでもその気になれば外へ出る事が出来るからこそ、僕は出なかったんだ。
いくら外へ出ようともがいても、自室であるという事実がやがて僕の心を圧迫し始め、
食糧事情によるカルシウム不足も手伝って、苛立ちは募った。
いくらおとなしく待っていても、事態は好転しない。
かくなる上は、この永遠と続く部屋の果てを目指して旅立ち、脱出を試みるしかない。
この不毛の地に閉じ込められて一週間ほど経ったある日の6時、
相変わらず朝なのか夜なのか分からなかったけれど、僕は出発することにした。
自室Aのドアを開くと、自室Bに出る。
そのまま自室Bを真っ直ぐ突っ切ると、窓がある。
窓を乗り越えて向こう側へ出ると、そこは自室Cだ。
僕はそうやって、真っ直ぐ突き進んだ。
「部屋の果てを目指す」
なんて大層な決意を固める必要はなかった。
要は部屋を横切る動作の繰り返しだったからね。
部屋の食べ物が無くなれば、隣の部屋に移ればいい訳だし、水もある。
疲れたら、腐りかけのベッドが僕を温かく包んでくれる。
初日、僕は20の部屋を横切った。それでも部屋は続いていた。
流石に阿呆らしくなって、その日はそこで宿泊することにした。
○
3日目、錬金術を発見した。
本棚の隙間に、千円札が挟まっていたんだ。
いつだったか、ゲームでも買おうと貯めるつもりで挟んでおいたのを忘れていた。
果てしない部屋の旅に、千円札なんて何の価値もない。
そう思って隣の部屋に移る。
しかし、その部屋でも本棚の隙間から千円札を発見した。
なんてこった!
これじゃ部屋が続くかぎり、無限に金を増やす事が出来るじゃないか。
部屋の脱出を果たした暁には、僕は大金持ちになっているだろう。
何という商売。
この金さえあれば、もうNERVに媚びへつらうことなんて無くなる!
この街からおさらばして、悠々自適な生活が待っているんだ。
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