過去ログ - アスカ「私なりの愛ってやつよ」
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16:アスカ「私なりの愛ってやつよ」
2011/04/13(水) 23:40:33.74 ID:nYXsbXrS0
「屁とも思わないくせに」

「またそんなこと言うんだから。今だって、アンタの評判は悪いけれども、私の天才的な立ち回りを見せて、
かばってあげているんだからね。少しは感謝してほしいってもんよ」

「感謝なんて、するもんか」

「感謝するのはタダよ」

 秋の淋しさが身にしみてくる頃で、鍋のぐつぐつと煮える音が温かい。
 こんな秋の夜を共に過ごしてくれる人がアスカだけというのは由々しき問題だと思った。
 人間として間違っている!

 妙な組織に紛れ込んで不貞腐れている場合じゃない。
 組織の外には、まっとうなスクールライフが待っているんだ。

「もうちょっとましな学生生活を送るべきだったとか思ってるんでしょ」
 アスカが急に核心をつくような事を言った。

「……僕はもっとほかの道を選ぶべきだった」

「慰めるわけじゃないけど、アンタはどんな道を選んでも私に会っていたと思うわ。直感的に分かるのよ。
いずれにせよ私はアンタに出会って、全力でアンタを駄目にするわ。運命に抗ってもしょうがないでしょう」

 アスカは小指を立てた。

「私たちは運命の黒い糸で結ばれてるってワケ」

 ドス黒い糸でボンレスハムのようにぐるぐる巻きにされて、暗い水底に沈んでいく男女の
恐るべき幻影が脳裏に浮かび、僕は戦慄した。

 アスカはそんな僕を眺めながら、愉快そうに豚肉を食べている。

「冬月副司令にも困ったもんよ」
 と言った。

「私は<技術開発部>に移ったというのに、色々と相談を持ちかけてくるのよね」

「君みたいな人間が、なんで気に入られるんだろうね?」

「非の打ちどころのない人柄、巧みな話術、明晰な頭脳、可愛らしい顔、こんこんと溢れて尽きない隣人への愛。
人から愛される秘訣はこれよ。少しは私に学んだらいかが?」

「うるさい!」
 僕が言うと、アスカはにやにやした。

 ○

 旅を始めて約20日が過ぎた頃のことだ。
 何番目の部屋かも分からない自室を通りぬけて、そろそろ行軍にも嫌気がしてきた頃。
 休憩することにして、大嫌いになったカステラを頬張った。

 休憩を終えて窓を開けた僕は、隣の部屋を覗きこんだ。部屋の隅に誰かが座って、読書に耽っていた。

 陳腐な表現を使えば、
「心臓が口から飛び出すほど」驚いた。

 本を読んでいるのは女性だった。
 静かにうつむいて、膝に乗せた「幸福な王子(オスカー・ワイルド著)」を読んでいる。
 美しいショートカットの黒髪が肩にかかって、つやつやと光っている。


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