27:アスカ「私なりの愛ってやつよ」
2011/04/13(水) 23:48:29.24 ID:nYXsbXrS0
元の世界に戻ってから、父に言って欲しい事があると、伝言を預かる事になった。
母は僕の耳に手を当て、ぼそぼそと伝言を伝える。
それを聞いた僕も、ニヤリと笑みを浮かべた。
○
目が覚めた。
回りを見回すと、どうやらエントリープラグの中にいるらしい。
僕はシートの上で毒虫のようにもぞもぞとしてから、のっそりと起き上がった。
ふいに、頭上から声が聞こえて来た。
「ああ、良かった。戻ってきてくれたのね」
モニターを通じて呼びかけて来たのは、伊吹二尉だった。
「あなた、80日間もヱヴァに取り込まれてたのよ。急にシンクロ率が上がったから、
もしやと思ってたんだけど。本当に良かった」
伊吹二尉は目に涙を浮かべながら、そう言った。
「マヤ、ちょっとマイク貸して」
赤木博士の声も聞こえてきた。うしろから慌ただしい雑音が聞こえてくる。
どうやら僕の居ない間に、何かあったらしい。
「詳しく説明している時間は無いんだけど、そのまま出撃してほしいの。
二号機が原因不明の暴走中なのよ。地上に出て止めて頂戴」
「はあ、分かりました」
僕はいきなりの出撃命令に、曖昧に答えた。
身体に強力なGがかかり、初号機は地上に射出された。
○
地上に射出された僕は、芦ノ湖に向かって走り出した。
街は藍色の夕闇が垂れこめている。
向こうには繁華街のネオンがきらめいている。
僕は家々を一足で跨ぎ、第三東京市を駆け抜けていった。
やがて芦ノ湖のほとりにある、箱根神社が見えて来た。
箱根神社の回りにうっそうと生い茂る松林を抜けると、美しい銀色の波にゆれる芦ノ湖が見えた。
向こう岸からは、暴走した二号機が湖にざぶざぶと入って来るところだった。
湖のたもとには欄干があり、二号機から逃げまどう人々の姿が見える。
右往左往している人々の中に、見覚えのある顔がいた。
アスカだ。
アスカは欄干に立って、今にも飛び降りそうなしぐさを見せたりしている。
よく見ると、周りに人が詰め掛け、彼女を責め立てているようだ。
また阿呆なことでもやったんだろうか。
アスカだけじゃない。父も加持師匠も綾波さんもいる。
僕は懐かしさに万感の思いがこみ上げ、涙が止まらなかった。
○
僕は湖に入り、二号機を止めた。
必死に押さえつけていると二号機は電源が切れたのか、そのまま湖深くに沈んでいった。
その視界の端に映ったのは、欄干に立っていた人影が湖に落ちる所だった。
ようやく事態が収束し、欄干では先ほどの恐怖体験を声高に語り合う人々の声に満ちたけれど、
僕は黙然とし対岸を見つめていた。
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