過去ログ - アスカ「私なりの愛ってやつよ」
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28:アスカ「私なりの愛ってやつよ」
2011/04/13(水) 23:49:01.21 ID:nYXsbXrS0
 対岸の壁面に、赤くて汚いスルメのようにわだかまっているものがある。
 あれはアスカじゃないか。
 彼女は手足をばたつかせ、水に流されまいと溺れていた。

 欄干を人々がびっしりと埋め尽くし、
「あいつ本当に落ちた」

「やばいやばい」

「助けてやれ」

「救急車はまだか」
などと口々にわめいている。

 僕はエントリープラグのハッチを開け、初号機の外に出た。
 そのまま勢いよく湖に飛び込み、対岸に向かって泳いでいく。

 たとえようもなく良い匂いがした。
 それは何か一つの匂いと言うわけじゃない。
 外の匂い。
 世界の匂いだ。

 匂いだけじゃない。
 世界の音が聞こえる。
 森のざわめきや、小川のせせらぎ。
 夕闇の中を飛び交うヒグラシの鳴き声。

 幾度か足をつりそうになり、水に流されかけながらもアスカのもとへ急いだ。

 アスカ、アスカ、アスカ!

 ようやく壁面までたどり着いて、
「大丈夫?」
と尋ねた。

 アスカは僕の顔をまじまじと見て、
「アンタ、生きてたの?初号機に取り込まれたんでしょう」
と言った。

「大変だったんだ」

「まあ、こっちもなかなか大変よ」

「助けるよ」

「あ、いたたた。駄目よ、これは絶対折れてるわ」

「ともかく浅瀬へ向かおう」

「いたい、いたい。動かしちゃダメだってば。なんで私に構うのよ」

「僕と君はどす黒い糸で結ばれているんだろ?」

「そんなの知らないわよ、イヤだってば〜」

 欄干で蠢いていた群衆のうちの一部が駆け下りてきて、助太刀してくれた。

「運ぶぞ」

「おまえはそっち」

「おれはそっち」
 と頼りがいのある声を出し、手際が良い。

「痛い痛い、もうちょっと丁寧に運びなさいよ!」
 とぜいたくな事を要求するアスカは岸まで運ばれた。


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