3:アスカ「私なりの愛ってやつよ」
2011/04/13(水) 23:23:08.33 ID:nYXsbXrS0
同居している葛城二佐は要人であるため、保安上の問題から現在マンションには僕たちしか住人はおらず、
部屋からの明かりが全くないため廃墟同然だ。
おまけに同居人は生活力が皆無であるため、部屋は散らかり放題になっている。
第三新東京市に越してきた頃、葛城二佐の勧めでここを訪れたとき、ゴミ屋敷に迷い込んだのか
と思ったのも無理のない話さ。
彼女の生活無能力者ぶりはもはや重要文化財の境地へ達していると言っても過言ではないけれど、
僕たちがこの家ごと消失しても気にする人は誰もいないであろうことは想像に難くない。
本部に住んでいる父さんですら、いっそせいせいするに違いない。
忘れもしない、あの「冒険旅行」にでる前夜のことだった。
コンフォート17の一室で、一人でふくれっ面をしてジョニーを慰めていた僕を、アスカが訪ねてきた。
アスカとはこの街に越してきて知り合って以来、腐れ縁が続いていた。
秘密機関<NERV>から足を洗い、他人と交わることを潔しとせず孤高の地位を保っている僕にとって、
長く付き合っているのはこの腐れへっぽこ妖怪のような女だけだった。
僕は彼女によって自分の魂が汚染されることを厭いながらも、なかなか袂を分かつことが出来ないでいたんだ。
彼女は隣近所に住んでいる加持という人物を「師匠」と呼んで足しげく通っていたんだけれど、そのついでに
いちいち僕の部屋へ顔を出すんだ。
「相変わらず冴えない顔してるわねえ」
とアスカは言った。
「恋人もいない、学校にも行かない、友だちもいない、アンタはいったいどういうつもり?」
「アスカ……、いい加減口を閉じないと、僕でも怒るよ」
「アンタにそんな度胸、あるかしらね?」
アスカはニヤニヤした。
「そういえばおとといの夜、アンタいなかったでしょう。わざわざ来たのに」
おとといの夜?僕は記憶を手繰り寄せるため、思案する。
ああ、あの時のことかと思い当たる。
「おとといの夜は、たしか小腹がすいてコンビニに出かけたなあ」
「ユイさんっていう女性を紹介しようと思って連れて来たんだけど、アンタはいないし、
仕方ないからほかに連れてったわよ。残念だったわね」
「君の紹介なんかいらないよ」
「まあまあ、そんな不貞腐れないで。そうだ、これあげるわ」
「何だいこれ?」
「あんたバカァ?見て分かんないの、カステラよ。加持師匠から沢山貰ったから、
おすそ分けってコト」
「めずらしいね。君がものをくれるなんて」
「大きなカステラを一人で切り分けて食べるなんて、孤独の極地だもんねえ。
せいぜい、人恋しさをしみじみ味わいなさいな」
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