8:アスカ「私なりの愛ってやつよ」
2011/04/13(水) 23:32:11.97 ID:nYXsbXrS0
「学生さん、何を聞きたいんだい?」
「そうだね、何と言ったらいいか……」
僕が答えに詰まっていると、少年は微笑んだ。
「今の君の顔からするとね、とてももどかしいという気持ちがわかるよ。不満というものかな。
君、自分の才能を生かせていないように感じるなあ。どうも今の環境が君にはふさわしくないようだね」
「うん、そうなんだよ。まさにその通りだ」
「君は、非常に真面目で才能もあるようだから…」
少年の慧眼に、僕は早くも脱帽した。
「とにかく好機を逃さない事が肝心だよ」
「好機?」
「好機はいつでも君の目の前にぶら下がっている。君はその好機をとらえて、行動に出なくちゃいけない」
「ヒントをあげる。それは"メガネ"さ」
僕はきょとんとして聞き返した。
「メガネ?何のことだいそれは。僕は近眼じゃないよ」
「メガネが好機の印ということさ。好機がやってきたら逃さない事だよ。その好機がやってきたら、
漫然と同じことをしていては駄目なんだ。思い切って、今までと全く違うやり方で、それを捕まえてごらん」
答えのようで、答えでないような事を言われた。
「もしその好機を逃したとしてもね、心配することは無いんだよ。君は立派な人だから、
きっといずれは好機をとらえることが出来るだろう。僕には分かっているさ。焦る事なんてない」
そう言って、占い師は締めくくった。
「ありがとう、なんだか気分が晴れたよ」
僕は頭を下げ、料金を支払った。
そして迷える子羊のように、フラフラと繁華街を後にした。この少年の予言について、よく覚えておいてほしい。
○
ひょっとしてこれは少年の呪いじゃないだろうか?
その恐るべき呪いを解くカギは、彼の言ったメガネという言葉に隠されているかもしれない。
僕は眼鏡をかけるほど悪くないし、眼鏡をかけている知り合いなんて沢山いる。
ひょっとして、既に起きた出来事の中にメガネに関わる好機を見逃しているんじゃないか?
そう思って思案しているうちに、僕は安らかな眠りについた。
目が覚めると、時計の針は12時を指していた。起き上がってカーテンを開いた。
ひょっとしたらと期待したけれど、窓の外は相変わらず部屋が続くばかりだった。
青空なんてこれっぽっちも見えない。
寝れば何とかなると思っていたけれど、目覚めてみても状況は変わらない。
ドアを開いてみても、鏡映しの部屋に出るだけだ。
僕は自室の真中にあぐらをかいて、珈琲がゴボゴボ沸く音を聞いた。
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