過去ログ - 一方通行「いい子にしてたかァ?」3
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5: ◆d85emWeMgI[saga]
2011/04/19(火) 01:11:24.67 ID:j/+2kGnd0


「とーまにもう一度、本当は考え直してもらおうって思ってたの。捨ててしまったものを見つめなおしてもう一度って。

 でも、送り出してから凄く恐くて仕方が無かった。イギリスに行った頃はあんなにとーまが来るのを嫌がってたのに…寂しいけれど、本当に来ちゃいけないって思ってたんだよ。

 でも…ダメだった。もう身体がとーまのこと、覚えちゃったから。だからもうダメ。あの時みたいに、とーまときっぱりサヨウナラなんて出来ないんだよ…

 だから、とーまが帰ってきてくれた時は嬉しくて泣いちゃいそうだった……自分で送り出しておいてね……」




 ――― ワガママだね ―――



小さく、消え入りそうな声で呟いた。



「それ…まだ付けてたンだな」

「え?」


少女の白銀の髪を留めている色褪せた羽のヘアピンを見遣る。
見覚えならあった。選ぶ手伝いをしたのは自分だ。
気の利いたプレゼントを、と泣いて縋りつく上条に辟易して、そして根負けした。
けれども、いざプレゼント選びの時になって、乗り気になった自分と、任せるといいながらも自分のこだわりをしっかりと持っていた上条の意見は悉く対立した。
そして、ふと目に付いたのは青い羽。
『幸せの青い鳥』という童話を、上条は思い浮かんだようだった。
一方通行も打ち止めに読んでやっていた童話の一つだったとすぐに思い出した。
平行線だった二人は、何かに引かれるように、このヘアピンを選んだのだ。



「いいンじゃねェの?我が侭で。どうせ誰も彼も幸せになンて出来ねェンだ。だったらまずテメェ自身を幸せにするところから始めろよ。
 
 それに、テメェ自身の幸せってのを考えらンねェ野郎にはきっと誰も幸せになンざ出来やしねェンだよ。テメェはあの野郎を幸せにしてやりたくねェのか?」



少女はゆるゆると首を振る。

一方通行は安心したように、微かに口元を緩める。



「じゃあ、そのままあでいろよ。我が侭言って、あの馬鹿を振り回してやれ。存分に甘えてやれ。

 それから……それから、馬鹿みてェにアイツの側で笑ってろよ。それがあの野郎の幸せだろ」




煙草を吸うわけでもなく、手の中でジッポを転がしながら一方通行は苦笑する。
お前が言うな、と誰かが怒鳴る声が聞こえた気がしたからだ。
少なくとも、ついこの前までの自分が言っていいセリフではない。


『自分の幸せ』などという言葉など、一方通行から出てくるはずの無いものであった ――― 嘗ては。







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