過去ログ - 一方通行「いい子にしてたかァ?」3
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86:エジプトの空の下で羽を休める[saga]
2011/04/22(金) 20:16:45.75 ID:ZsCYfME+0
最初は、騙され芸人らしく、学園都市第一位の口車に乗せられるがままに飛行機に放り込まれただけだった。
アフリカから帰ってきた翌日の事である。偶々、桜餅に話題が及んだ結果である。
断じて、出し損ねたわけでもなければ、イギリスから来日する男のせいで忙しくなる本編をこれ以上ややこしくするキャラクターを強制排除したかったわけでは決して無い。
そしてマレーシアで知ったこと。
桜餅のヒントはマレーシアには無いということ。
それから、攫われたジョシュアとハワードの消息を掴んだ一行はベトナムに渡り、更にはインドへと渡った。
そこでとある財宝を狙う盗賊団と戦い、また、とある富豪にプレシャスの奪還を依頼されていく内に気が付けばエジプトに来ていた。
そうこうしているうちに、黒子の中から一方通行への恨みは消えていった。
代わりに、彼女の心に宿るようになったのは、この苦しいはずの旅を惜しむ気持ちだった。
「炎は幾ら見て居ても飽きないのである」
黒子が傍らに置いていた枝を投げ込みながら呟く。
「昔ある男が言っていたのである。炎は常に形を変え続ける。そこには何の意味も無い。見るものが勝手に己の心の在り様を投影していくだけだ、と」
「己の心の在り様…」
アックアが薄い唇を引き結ぶ。
それなりの苦難を共に潜り抜けてきた黒子にはわかる。
不器用なこの男なりの、柔らかい表情なのだこれが。
「白井副隊長が炎に何を見出しているのかは私にはわからない。しかし、副隊長が見ているものであれば、きっと意味のあるものなのである」
「そんな手放しの賞賛を受けても正直こまりますの。私なんて」
この小隊、そう呼んでも過言ではない荒くれ集団に身を置くようになってから思い知った。
今までの自分は学園都市という狭い箱庭でチンケなチンピラを小突いて粋がっていただけの子供だと。
世界を知り、己を知り、そして尚邁進することの苦しさを初めて黒子は知った。
アックアの厳しくも凛々しい横顔に目を向ける。
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