過去ログ - 一方通行「いい子にしてたかァ?」3
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901: ◆d85emWeMgI[saga]
2011/06/04(土) 07:06:39.88 ID:o1YNICk80




そして、今、一方通行は病室のドアの前に棒のように突っ立っている。
プレートには『御坂 美琴』の名が油性ペンで丁寧に書かれている。
奇妙な緊張感に見舞われ、一方通行は数分もの間、足を踏み入れる踏ん切りが付かなかった。
ドアノブに手を触れようとして、掌が汗でじっとりと濡れていることに気付き、引っ込める。
疚しいことなど何も無いはずだ。寧ろ自分は感謝されることをした。
それは、客観的に見て事実といえる。それでも尚、一方通行の中にはしこりのような躊躇いがあった。
ドアの前で散々逡巡している様がまるきり子を産む決意を一方通行に伝えに来た日の美琴と同じであることにも気付かず、杖を握る手にばかり力が籠もる。


「こぉら、髪の毛食べないの」

「あ〜うぅ」


不意に病室から漏れてきた美琴の声と、初めて聞く声にぴりっと背筋に得も言われぬ衝撃が走った。

赤ん坊の声だ。

美琴以外の存在を、改めて確認させられる。
子供が産まれたのだから、当たり前のはずなのに、あどけない声を実際に耳にすると一方通行は軽い動揺に襲われる。
同時に、今更何を、何から、何で逃げようとしていたのか、自分自身への不可解さへの軽蔑が生じる。
自分がすべきことなど決まっているのに。舌打ちを零すと、ドアノブに手を掛ける。





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