過去ログ - 一方通行「いい子にしてたかァ?」3
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906: ◆d85emWeMgI[saga]
2011/06/04(土) 07:26:25.13 ID:o1YNICk80
「ソウ?」
「想うって言う字で『想』……」
想という言葉を、一方通行は口の中で何度も吟味するように転がす。
「あの子が前に言ったでしょ?私だけの子じゃないって。私達の子だって」
10032号の言葉だ。
「それはね、今を生きている妹達だけじゃない、死んでしまった妹達も全部含めて。あの子達は死んじゃったけど、この子がいる。人になれなかったあの子達が持つ筈だった想い。幸せになりたかった子の想い。精一杯生きてきた子達の想い。これから幸せになりたいっていう想い。私自身、もういなくなったけれど、アイツに出会えて変われた、想いの証として。それから……幸せになって欲しいっていう私とアンタの想い。色んな人たちの、色んな想いをこの子は背負ってるの」
「重たくねェか」
「かもね。押し潰されそうに思う日が来るかもね。でも、大丈夫。だって私達の子だもん。それに……アンタも守ってくれるんでしょ?」
悪戯っぽく美琴が笑う。
一方通行は静かに、自分を見上げる赤ん坊 ――― 想を見つめる。
その横顔を優しげに見つめていた美琴は、自然と口を開いていた。
「ありがとう……」
不意討ちに等しい言葉に、一方通行は目を見開いて美琴に視線を移す。
「止めろ……」
「ありがとう……一方通行。その子に会わせてくれて」
「言うな。俺には」
「止めない。止めてあげない。前にアンタ言ったわよね。感謝なンかするな、って。そうやっていつも逃げてきたけどさ、もういい加減観念なさいよ」
美琴は首を振る。
往生際の悪い男に、無理矢理にでも聞き入れてもらう。
「言っておくけどね、感謝は受け取らないっていうのは、許さないから。怒りも憎しみもぶつける。でも、感謝だってアンタは受け止める義務があるのよ?っていうか、受け止めるまで何度でも言ってやるわ」
それは、甘く、柔らかい無理強いだった。
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