過去ログ - 番外個体「今は、まだ」
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11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2011/04/21(木) 21:04:49.35 ID:JO1JEfB90
麦野のマンションまでは、ゆっくり歩いても五分ほどだった。

カツン、カツン、と一歩踏み出す毎に、鈍い頭痛が番外個体を襲う。
その痛みは、耐えられないというほどではないが、やはり本調子ではないことを思い知らされる。

先ほどから常に二、三歩前を歩く麦野は、決して後ろを振り返らない。
それは、彼女なりの気遣いであるのだろうか。

「ねえ、麦野」

番外個体が麦野の名を呼ぶ。

「何?」

答える麦野は、相変わらず前を向いたままだった。
番外個体の視界には、ふわふわと揺れる茶色い髪だけが映っている。

ふと視線を落として、番外個体は呟いた。

「ミサカも、麦野と同じになっちゃった」

その言葉の、表すところは何であるか。

「そう」

説明はなくとも、意味は通じる。

麦野は小さく相槌を打ったきり、また黙って歩き続けた。
番外個体も、もう口は開かなかった。


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