過去ログ - まどか「黄金の……狼……」 牙狼―GARO―魔法少女篇
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2:1 ◆ySV3bQLdI.[saga sage]
2011/04/22(金) 00:23:15.13 ID:Nr8ofJqk0

 私は知らなかった。
この世界には、とても人智の及ぶものではない、謎めいた存在が数多く潜んでいるということに。

 それはすぐ近くにいるのに、誰も気付かない。気付けない。
 無数の人間が行き交う街の雑踏。
もしも、その中から一人や二人消え、二度と帰ってこなかったとしても、きっと大半の人間は気にも留めないだろう。
周囲の関係者は騒ぐだろうが、それとて一過性のものに過ぎない。日常の波は全てを覆い隠し、世界は無常に流れていく。

 奴らは、そこに忍び込む。世界の隙間、街の隙間、人の心の隙間に。
 じっと暗がりに潜み、手招きしているのだ。獲物がやってくるのを。
 そして夜が来れば動き出す。

 自ら街に繰り出し、狩りを始めるもの。
 使い魔を放ち、それを操るもの。
 不安や恐怖を煽り、縄張りに獲物が踏み込んでくるのを待つもの。
 それぞれである。

 古来より、夜は人の時間ではなく、闇は人の領域ではない。それが本来の在るべき姿。
知らずに来る者には罠が、確信で来た者には罰が与えられる。
いくら作り物の光で照らそうと所詮は偽り。昼のそれに比べれば、闇の全てを照らすにはあまりに心許ない。
 故に、その存在を知る者は夜が訪れる度に怯え、知らない者が知る時、大抵の場合は既に手遅れだった。

 では、人に抗う術はないのだろうか。
 自分の番が来ないよう祈りながら、ただ狩られるのを待つばかりなのだろうか。
 夜毎繰り返される、何千分の一かのルーレットに当たってしまった人間は、己の運のなさを嘆くしかないのだろうか。

 答えは否。
 光の世界から弾き出され、或いは引きずり込まれ、闇に囚われた者にも最後の救いは残っている。
 もっとも、救いの手が差し伸べられるまで運良く生きていられれば、ではあるが。

 私には、その為の力があると思っていた。人を脅かす敵を蹴散らし、闇を祓えるだけの力が。
 最初こそ、この力を他人の為に振るおうかとも考えた。
動機は甘い英雄願望だったのか、恐怖に立ち向かう術を求めたのか。今となっては定かではない。

 だが真実は違った。
 やがて私は知ることになる。私もまた、闇に囚われた哀れな虜囚でしかなかったのだ。


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