過去ログ - まどか「黄金の……狼……」 牙狼―GARO―魔法少女篇
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◆ySV3bQLdI.
[saga ]
2011/11/18(金) 04:17:34.31 ID:a7u3xc3Yo
*
夕陽の反射が眼に差し、咄嗟に目を瞑る。
キィン――と、高音が耳に遠い残響を残す。
杏子が目を開いた時、一歩の距離に彼は立っていた。
両手には逆手に握った剣。身長の割に少し短く、取り回しやすい長さ。
剣を顔の高さまで上げ、荒い息を吐いている。
右眼は剣で隠れて見えなかったが、それは紛れもない涼邑零。
しかし、その面に余裕の微笑はなく。
あったのは凍てついた眼光と冷徹な狼の顔。
背筋を震えが駆け抜けた。
その眼力の鋭さときたら、数分前に自分が彼に送ったものの比ではない。
軽薄な仮面の下に隠されていた、これが、この男の素顔。
この男の本性。
杏子は暫し呆けていたが、切断された槍の穂が地面に突き立ったのを合図に動く。
本能の警告に従い、素早く後退ると持った槍を捨て、新たに作り出した槍を構えた。
逃げれば死に、立ち向かっても死ぬ。
猟犬にセットされた野鳥。それとも狼の群れに囲まれた獣か。
どちらにせよ、射竦められて動けないのは確かだった。
戦闘態勢を維持したまま、睨みあうこと数秒。
「……やめた」
言いながら零が剣を下ろすと同時に、張り詰めた空気が弛緩する。
呼吸も止まっていた杏子は吐息と共に、
「はぁ……?」
と、間の抜けた声を漏らしてしまった。
零はくるくる剣を回しながら腰の鞘に収めると、両の手のひらを開いて見せる。
表情には憎たらしい微笑が戻っていた。
「降参。俺の負けだ」
最初は何を言っているのか訳がわからなった。
ただ膝から崩れ落ちないようにするのが精一杯だった。
やがて理解が追い付くと、腹の底から沸々と言葉にならない感情が込み上げてくる。
「ふっ……ふっ……」
震える肩と声は果たして笑っているのか、怒っているのか。
おそらくは後者だろうが、怒り過ぎて笑うしかないのかもしれない。
ともあれ、言いたいことはひとつ。
「ふっざっけんなあああああああ!!」
最大級の感情の爆発を解放するかのように、杏子は力の限り叫んだ。
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