過去ログ - キャスター「宗一郎様。 ここは…学園都市ですわ」
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16: ◆CERO.HgHsM[sage saga]
2011/04/25(月) 23:44:09.95 ID:Ba1LraOvo
>>10


ここは男が存在していた世界ではないとキャスターが説明をする。

この地は学園都市と呼ばれているということ。
科学技術が発達した超巨大都市であるということ。
8割が学生というのこの都市には隠された側面が幾つもあるということ。

超能力と魔術。
科学とオカルト。
相反する二つの領域。

そんな世界に転移してきたのだとキャスターは言う。

常識というものを持ち合わせている者からすれば、それは荒唐無稽にも程がある話だ。
けれど長身痩躯の男は驚きを見せることもなく、ただ静かに話を聞くに務めていた。

そして――葛木宗一郎はすべての話を聞き終わると


「……そうか。 大凡の事情は理解した」


ただそれだけを口にした。

その言葉に込められた意味は一体どのようなものか。
無表情な葛木の顔からはどんな感情も読み取れず、キャスターに怯えがはしった。

「どうしたキャスター。 言いたいことがあるのなら遠慮をするな」

葛木にそう問われ、キャスターの肩がビクリと震える。
抑揚のない声というものは、その実どのような恫喝よりも心を圧迫するものだ。
後ろめたい思いをその胸に抱える者ほど、この声に畏れを抱く。

つい先程まで再開の歓喜に震えていたキャスターだったが、今胸の中で渦巻く感情は罪悪感だった。

考えてみれば葛木はキャスターの願いに巻き込まれただけにすぎない。

自らに望みがないと言い切る葛木のことだ。
新たな世界を望んでいなかったことも充分に考えられる。

ならば同じではないか?

姫を無理やり外界へと連れ出した“英雄”。
男を無理やり異世界へと連れ出した“魔女”。

自分は――あれほど嫌い、恨んでいた“英雄”と同じことをしてしまったのではないか?

嫌悪感と罪悪感に苛まれているキャスターは葛木の目を見ることが出来ない。
俯きながら、恐る恐る口を開くのが精一杯だった。

「申し訳ありません宗一郎様…… 私の勝手な願いに宗一郎様を巻き込んでしまい……」

「………」

葛木宗一郎は理解出来なかった。
目の前で不安気に瞳を伏せている女が何を思って、何故謝ったのか。
それが彼女の過去に起因するものだと知らず、けれどそれを聞き出そうとも思わず。

葛木はただ己の思っていることをそのまま口にした。


「何を謝ることがある? 言ったはずだ。 私に望みなどない。 お前が望むことならば、私はそれに手を貸すまでだ」


葛木宗一郎は嘘をつかない男だ。
その嘘偽りのない言葉はキャスターにとって何よりも嬉しいもの。

思わず葛木の胸の中に飛び込もうとしたキャスターだったが。
それは続く葛木の言葉で押しとどめられた。



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