過去ログ - キャスター「宗一郎様。 ここは…学園都市ですわ」
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170: ◆CERO.HgHsM[sage saga]
2011/05/22(日) 14:50:26.76 ID:WsmueK3So

『――学園都市に一人の魔術師が居を構えた。 今更、言うまでもないことだろうが科学サイドと魔術サイドは相互不干渉だ。 故に君達に動いてもらおうと思うのだが』

教えたはずのないステイルの携帯が鳴り響き、電話口に出た途端だった。
雑音めいた不快な声がステイルの鼓膜を揺らす。

『……随分と唐突ですね。 それに電話とは思いもしませんでしたよ』

知らず、ステイルの顔が強張る。
声の主が誰かなど聞き返す必要もない。
男のような女のような、老人のような子供のような、そんな喩えようのない声をもつ者などこの世界に二人といるはずもない。

『ふむ。 本来ならばこちらに来て貰いたかったのだがな。 些か支障が生じたせいで、このような方法でしか連絡をとれないのだ』

『……そうですか』

アレイスター・クロウリーの言う支障。
それは窓のないビルへの案内人という役目をもつ結標淡希が現在入院しているということだ。
しかしステイル=マグヌスはわざわざそのことについて追求しようなどとは思わなかった。
電話口の向こう、アレイスターはステイルの考えを見透かしているかのように言葉を続ける。

『それと――唐突という君の意見だが。 まずは慣習に従い世間話でもしたほうがよかったかね? 君はそのような茶番は望まないものだと思っていたが?』

『えぇ。 その通りです。 先程、君達――と仰ってましたがそれはいったい?』

突然のアレイスター・クロウリーからの連絡にきな臭い予感を感じながらもステイルは問いかける。

『おかしなことを聞く。 学園都市の住人と接点のある魔術師などそう多くはないはずだが?』

『神裂……ですか』

『そうだ。 それの運用を阻んでいたのは刺突杭剣だったはず。 しかしそれは伝承の交差による存在しない霊装ということは言うまでもないだろう。 ならば問題はないはずだ』

そしてアレイスターは簡潔な情報をこちらに送るとだけ言い残し、連絡を断ち切ったのだ。


ビープ音を返す携帯電話を手にしてステイルは考える。
言い知れぬ不安が残っている。
世界で20人に満たない聖人を呼べという命令にもとれるアレイスターの言葉。
いったい何を思い何を考えアレイスター・クロウリーはそんなことを言ったのか。
あの“人間”が何を考えているかなどステイルは知りようがない。

けれど結果として、ステイルはアレイスターの望み通りに神裂を呼んだ。
戦力として考えれば彼女程心強い味方はそうはいない。
ましてや学園都市に潜むという魔術師の狙いが定かでない以上、当然の選択だ。


しかしやはり今も尚、漠然とした不安がステイルの胸の中で燻っている。
何もかもが曖昧であやふやなまま、動いている気がしてならない。
そんなステイルを見て、神裂は静かに話しかけた。

「私のことはともかくとして。 ステイル? 貴方こそ先日の戦いで傷を負ったと聞きました。 無理はしないでください」

「ん? ……あぁ、オリアナ=トムソンとの一戦のことか。 問題はないさ。 僕にできる治癒魔術はせいぜいが火傷の怪我を治すくらいだけどね。
 ……どうやらあの変な顔をした医者は随分と凄腕だったらしい」

そう言って指先に火を灯し、煙草に火をつけて炎の魔術師が歩みを再開する。
気遣われるのはごめんだ、と背で語るステイルの後ろ姿を見て僅かに神裂が微笑んだ。

「そうですか。 安心しました」

僅かに歩調を早め、ステイルの隣に並ぶ神裂。

学園都市に現れた魔術師の目的が判らぬ以上、事が起きてからでは遅い。
なにせ、この学園都市には彼等がその身を賭してでも守りたい人々がいる。

必要悪の教会《ネセサリウス》に所属している二人の魔術師、ステイル=マグヌスと神裂火織が夜の学園都市の中へと消えていく。

必要悪の教会《ネセサリウス》。
それは“悪い魔術師から市民を守る”という方向性に特化しすぎた必要悪の部署だ。
それが十字教旧教三大宗派の一つイギリス清教第零聖堂区であり。
そしてこの部署に所属する魔術師の使命を一言で表すならば。


 魔 女 狩 り 


という言葉が最も相応しい。


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