過去ログ - キャスター「宗一郎様。 ここは…学園都市ですわ」
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4: ◆CERO.HgHsM[sage saga]
2011/04/25(月) 03:55:09.11 ID:GjrvZVV5o
―――目眩がした。


空を見上げれば天の逆月がゆっくりと割れだしている。

終わりの刻が始まったのだろう。

秘蹟を紡いでいた指先が、光の粒子となり還っていく。

貝紫のローブに身を包んだ魔女がそれを見て、小さく溜息をついた。


この夢が終わればどうなるかなど魔女には判っていた。

もとよりここはありとあらゆる可能性を内包した輪廻する夢物語。

その軛から解き放たれれば、事象は全て収まるべきところに帰結する。

先の戦争において【英霊】として呼び出された魔女は敗者であり、共に戦った一人の男も敗者だ。

それが帰結すればどうなるかなど言うまでもない。

この世界が終わるのと同時に魔女は【座】へ還ることとなり、男は死者として荼毘に付されるだろう。

こればかりは如何に魔女とてどうすることも出来ない。


魔女の胸が張り裂けそうに痛む。

失ってしまう。

愛する男を。

平凡な日々を。

ようやく掴むことが出来た桃源の夢を。

それら全てが消えてしまうのだ。

小さな嘆息が魔女の口より漏れる。


『そう――もう終わりなのね』


この優しい夢の世界で魔女は幸せだった。

本当に幸せだった。


けれど、それはもう終わる。

【座】へと還ってしまえば、今のこの感情すら消えてしまう。

魔女はそれが判っていて――けれど、それでも男を想っていた。

この身が欠片となり、光となり、"座"に戻るその瞬間までただ男を想っていたかった。


『お別れです   様。 あぁでも…私はもっともっと続けていたかった。 ずっと貴方と共に居たかったんです』


万感の想いを込め、胸の内で愛する男の名を呟いて。

その時だった。


『よぉキャスター。 調子はどうよ?』


けけけ、と底意地の悪そうな笑い声がどこからともなく聞こえてきたのだ。


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