過去ログ - キャスター「宗一郎様。 ここは…学園都市ですわ」
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7: ◆CERO.HgHsM[sage saga]
2011/04/25(月) 07:16:45.84 ID:GjrvZVV5o
アヴェンジャーの提案は神代の魔女とて思いも寄らぬものだった。
けれど、魔女はその提案を聞いて手放しで喜びはしなかった。
しばし沈黙し、考えをまとめてから魔女は静かに口を開く。

『…そうね。 確かに今の貴方は聖杯を兼ねているもの。 可能かもしれないわ。 けれどね。 ――坊やも魔術師の端くれなら判っている筈でしょう?』

『あぁ。 等価交換……だろ? 神秘と奇跡には相応の代償が必要。 無償の協力なんて魔術に関わる者にとって有りえない。 遠坂にうんざりするほど言われたよ』

魔術師として召喚された魔女が、それを自ら破ることは出来ない。

『なら私が言いたいことも判るでしょうに。 私は今回の件に何も関わっていないのよ? 私がしたことといえばせいぜい見送りくらいだもの』

だから無理なのだ。と魔女は言う。
自分はそのような選択をとることは出来ないのだと。

しかし。

その魔女の言葉を聞いてアヴェンジャーがふぅと息を吐く。

その口調はアヴェンジャーであってアヴェンジャーではなく。

最後の聖杯戦争の勝者であるとある少年の口調そのものだった。

『なぁキャスター。 オレはさ、この結末を迎えることが出来てホント嬉しいんだ。 そしてそれはアンタが傍観者に徹してくれていたからこそだろう?』

それは事実だ。
魔女は絡繰を全て見抜いていた。
しかし魔女はただ平穏な日々を過ごすだけに務めていたのだ。

『アンタは何もしないということをしてくれていたんだ。 その気になれば、それこそ永遠にこの"聖杯戦争"を続けることだって出来たはずなのにさ』

『だからそれは…… 言ったはずよ? 私が何もしなかったのは貴方や坊やの為を思ってのことじゃない。 ただ私のマスターが望まなかっただけ』

『だとしてもだよ。 前から思ってたけど割と頭固いんだなアンタ。 とにかく、オレはもう充分にアンタに協力してもらってたってことになる。 だからこれはアンタに借りを返すようなもんさ』

そう言われて、魔女の心がぐらりと揺れた。

それは胸の内の心の奥底からだ。

まだ続けることができるかもしれない。
まだあの人と共に居られるのかもしれない。

魔女ではなく只の女として未来を求める声が漏れ聞こえてきたのだ。

英霊という己の役割を優先させるべきか。
惚れた男への感情を優先させるべきか。

板挟みの思考に混乱し、魔女は声を震わせる。

『ま、待って。 待って頂戴。 困るわ。 いきなりそんなことを言われても…… そ、そうよ。 宗一郎様にお伺いを立ててからじゃなきゃ……』

けれど悠長に答えを待つ時間は残されてなどいない。
アヴェンジャーの幽体が、魔女の幽体が欠けていく。
それが意味することはもう間もなく全てが終わるということだ。

その様を見たアヴェンジャーはハァと溜息をつき。


『キャスターのサーヴァント』 


堂々とした声で魔女へ最後になるであろう問いを投げかけた。


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