過去ログ - 俺の妹がこんなに可愛いわけがないSSスレ Part.10
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790:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県)[sage]
2011/06/06(月) 00:29:02.00 ID:3AZKAeRv0
 人の流れが多い、日曜の駅前。
 あやせが待ち合わせ場所に指定してきたのは、以前の偽デートで桐乃が指定した場所と、同じところだった。
 麻奈美は俺達がここで待ち合わせていたことを知らないはずだし、桐乃があやせに俺とのデートを話したりするとは思えない。
 そうなると、この符合は偶然なんだろうが……やっぱり、駅前ってのは待ち合わせのテンプレみたいなもんなんだろうな。
 腕時計を見ると、時間まではまだ三十分近くあった。どこかで時間を潰そうかと思ったが、桐乃はけっこう早めに待ち合わせ場所に現れたし……余計な動きはしない方がいいかもしれない。
 そんな事を考えながら、腕時計から前方へと視線を戻そうとしたとき、
「あ、お兄さんっ!」
 涼やかな声が、駅前に響いた。
 小走りでこちらへ駆けてくるあやせに、周囲の視線が集中する。
 あやせが向かう先に居る俺を見て、何人かは驚いたような表情を浮かべていた。
「ごめんなさいっ、お待たせしましたか?」
「いや、俺も今来たばっかりだよ」
 なんだかカップルっぽい台詞のやりとりに、俺とあやせは同時に赤面してしまう。……しょっぱなからこんな調子で、今日一日、俺は耐えられるんだろうか?
 のぼせて死んでしまうかもしれない。
「……今日はよろしくお願いしますね」
「お、おう」
「そ、それじゃ、さっそく行きましょうか」
 頬を染めたまま先に歩き出そうとするあやせ。
「……なあ、あやせ」
「なんですか?」
「ちょっとした提案なんだが……今日は『お兄さん』って呼び方、やめないか?」
「え?」
「どうせだったら、なりきった方がいいだろ?」
 桐乃だって、俺のこと「京介」って呼ぼうとしてたし。
 雰囲気を出すんだったら、そうするべきじゃないだろうか。……まあ、半分くらいは俺の個人的な願望であることは、否定しない。
「で、でも……」
「あ、嫌ならいいんだぜ?無理にとは言わねえからさ」
「い、嫌じゃないです。……そうですね。そっちの方がいいかもしれません」
 普段は透き通るように白いあやせの肌が、ぱっと見ただけでも分かるくらいに赤く染まっていく。
 緊張した面持ちのまま……あやせは小さく呟いた。
「今日は……よろしくお願いしますね、京介…さん」
「お、おう」
 まるでナイフで刺されたかのように痺れる俺の心。
 やばい。マジ可愛い。あやせたん、マジ天使。
「あのですね、おに……き、京介さん。私からも提案があるんですけど……」
 あやせはもじもじとしたまま、『提案』とやらをなかなか言い出そうとしない。
「今日は遠慮するなって。お前のためなら、多少の無理難題は聞いてやる」
「ま、またそんな……本当ですね?なら……」
 頬を染めたままのあやせは、おずおずと右手を差し出してきた。
「ひぃっ!?」
「な、なんで逃げるんですか!?」
「だ、だってお前!多少の無理難題は聞くっつったけどさぁ!こんな街中で手錠は、さすがにありえねえだろ!?」
 手錠つけたまま女子中学生とデートなんてしてたら、絶対に通報されるよ!お前にならまだしも、警察に本物の手錠なんてかけられてたまるか!
「違いますっ!?お兄さんは私をなんだと思っているんですか!?」
「今までお前にされてきた事を思えば、むしろ自然なリアクションだという自負があるんだが」
 その天使のように愛くるしい仕草に、何度騙されてきたことか。あやせが俺にかわいいところを見せてくれるのって、たいがい俺をはめようとしてる時だもんな。もうその手は食わないぜ。
「私はただ、手を繋ぎたいなって!………ぁ」
「え」
 そ、そうだったの?
「もういいです!お兄さんと手を繋ぐなんて、ありえません!ちょっとした気の迷いでした!」
 怒りのあまり、俺の呼び方がすっかり元通りになっている。
「待ってくれ!繋ぐ!繋ぎたいです!お願い!」
「ちょ、こんな所で土下座なんかしないでください!?」
 今までの人生で、一番のマジ土下座だった。この機を逃せば、俺はきっと、これからの人生をずっと後悔しながら生きていく事になる。人目なんか気にしてる場合じゃない。
 そんな俺の誠意が伝わったのか……あやせは呆れたような苦笑を浮かべつつ、そっと手を差し出してくれた。
「本当にしょうがないですね、お……京介さんは」
 慈愛に満ちたその笑顔は……まさしく天使そのものだったよ。


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