759:すけこ☆マギカ[sage saga]
2011/06/30(木) 22:00:56.39 ID:tqKZE5pmo
「イタイ人ですねマミさん、エリィさんが可哀想ですよ。避難させてあげないなんて。そんなに束縛したいんですか?」
ああ、私は冷静さを失おうとしている。マミはそう、どこか客観的に思った。
エリィ。こんな雨風の強い日に独りで、彼女は怯えているだろうか。避難所へ行かせるべきだったのか。
いや、私は彼女のためを思ってそうしたのだ。エリィは極度な人見知りだから……それにまた魔女に戻ってしまったら?
……全ては、ワルプルギスの夜を倒せばいいだけの事。自分が、さっさと部屋に帰ればいいだけの事だ。
「恭ちゃん、ごめん」
よろりと立ち上がったばかりの後輩を、縛る。リボンでくまなく包みこんだ。繭玉のようになった。
さっと腕を一降り。七丁のマスケットが現れる。
撃つ。撃つ。撃つ。撃つ。撃つ。撃つ。撃つ。
着弾の度、繭が震える。
「おとなしくしててね」
繭は動かなくなった。
通常、魔法による攻撃を受ける際、皮膚を針の先でこすられるような感覚が事前にある。照準の魔法に、ソウルジェムがわずかに反応するのだ。
長く戦ってきたマミは、その感覚は鋭いと自負していた。繭からの照準がない事を確認し、さやかの傷を癒やそうと近寄る。
「マミ……さすが見滝原最強。しっかし、すけこのヤツ、どうして……」
「おそらくワルプルギスの夜の能力かもしれないわ。私達も気をつけないと……」
早く帰ろう、と。
確かにその思いがあった。
気を失ったままのさやかに、癒やしの魔法を施そうと、手をかざす。
違和感に気づき、それを理解した時には、もう遅かった。
「やっぱ、ムリして銃なんか使うもんじゃないですよ。強張ってて、とても脆い」
仕返しのような拘束。銀のリボンがマミと杏子、二人の全身に巻きつく。
固い戒めが完成と同時に、満開の花を提げる藤の木になった。雨の匂いを打ち消す、強い芳香。
繭玉を藤の花びらに変えて解き、立ち上がった上条恭子は、まったく無傷の美樹さやかを抱き上げる。
すでに癒やしの魔法は掛けられていたのか。それとも、そもそもが幻惑の魔法だったのか。いったいどこから、どこまでが幻。
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