767:すけこ☆マギカ[sage saga]
2011/07/03(日) 22:08:37.76 ID:2bNSmr0Yo
同時刻。鹿目まどかの家。
正確には鹿目知久の所有であるが、暁美ほむらにとって、ここは『鹿目まどかの家』だ。
それ以上の意味はいらない。犯行現場という語句を、今は思い出したくもない。
まどかの部屋。
暁美ほむらは、ベッドに横たわり、胸の前で手を組んで、目を瞑っている。
ぬいぐるみとパステルカラーの小物。デスクの上には、参考書とコミックが一緒くたに並ぶ。
そんな、十四歳の普通の女の子の部屋。十四歳の普通の女の子の世界。
「(まどか、ごめんね)」
己の異質さに、涙がにじむ。ほむらは自分が罪人だと思う。この世界にあってはいけないのだと嘆く。
枕元に置いた拳銃は、紛れもない鉄の塊だが、己が手にしていたためにそれは魔力と呪いを発していると、確信している。
先ほどまで、これを手に、家中を徘徊していた。
嵐を孕んだ厚い雲を突破して見滝原に戻ったものの、上条恭子からの指示は、ただ「ちょっと待ってて」と一言。
そして彼女は消えた。残酷な命令だと、ほむらは思う。この街は、否が応にも己の罪業を思い出させる。
つかの間の夢、世界の美しさは取り上げられ、己を無力で根暗なメガネの少女に戻してしまうではないか。
それで、いてもたってもいられず、いち早くまどかを連れ出す事にしたのだ。
鹿目家の玄関のドアを破壊した。
すべての部屋を、くまなく見て回った。
誰もいなかった。
まどか以外の人間に用はない。説明をする気もない。謝りに来たのでもない。
それでもストレスから銃を手にとり、がたがたと震え、鼻を啜り、嗚咽を漏らしながら彷徨っていた。
どこにも誰もいないという事が、信じられない。
自分を責めてくれるはずの人間が、誰一人、見当たらないなんて。
確認したはずの事実を、頭のすみに追いやり、泣きべそをかいて、また階段を昇り、疲れ果てるまで繰り返した。
こうして横たわっても、まだ心臓は早鐘を打ち、頭は岩のように重い。
今まで何度も、ワルプルギスの夜を経験している。今回もまた、繰り返される警報、避難指示を、実際に耳にしてもいる。
その意味に、現状、常識、統計からはじき出される解に、見て見ぬふりをして、彼女の意識はループを続けた。
「(約束を守れない私がいけないのね。だから出てきてくれないのね)」
妄想さえ信じた。
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