過去ログ - さやか「きょうこ、きょーこ」
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768:すけこ☆マギカ[sage saga]
2011/07/03(日) 22:10:45.09 ID:2bNSmr0Yo
 上条恭子の側に置かれた脳は、理性が衰える。
 王子の庇護にとろけ、魔女の寵愛に煮詰められ、脳はカスタードプディング同然。
 思考するという苦痛に耐えられなくなる。

「まどかはココにはいないよ」

 だから、ぬいぐるみに紛れた白い獣を、ほむらは見もしなかった。

「彼女は検査のために、見滝原医大付属病院に入院している。
 脳に負荷を掛け過ぎたんだ。約束を忘れる事を、彼女は選択しなかった。キミとは違ってね」

 皮肉を投げられても、無言。無反応。
 まどかがそうだったように、ほむらも自身を眠りの森に置きつつあるのだ。キュゥべえはそう認識した。
 それは彼女もまた、完全な忘却を選ばなかったという証だが、魔法少女の身では、一時の停滞も命取りだ。

「もうボクに銃を向けさえ、しないんだね。暁美ほむら……」

 動かぬ少女の前で、キュゥべえも動かなくなった。
 イエネコを模倣した動作パターンを止めた。
 生き物の模倣そのものを止めた。
 呼吸。脈動。汗腺。筋肉の伸縮。体皮の微細な揺らぎ。
 全停止。
 インキュベーターの端末は、肉の詰まったぬいぐるみと化した。

(……とんでもなく愚鈍な生き物になりさがり、地獄の業火に焼かれながら、それでも天国に憧れる)

 キュゥべえは思案する。
 宇宙破壊爆弾。
 その鍵。
 門となる少女。

『それは、暁美ほむらなのかい?』

 通信を開いて問いかけたところで、上条恭子には繋がらない。
 メアリ・マキナ・ハートレス。
 彼女達の魂を、かけらも感じる事はできない。


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