781:すけこ☆マギカ[sage saga]
2011/07/17(日) 22:41:23.58 ID:utcPm39Ao
「ミバエの幼虫だ」
気付けなかった事に、杏子は愕然とする。
「あれは一匹を百六十五以上の肉片にしないと消えないよ。それ以下の数では、砕いただけ増えていってしまうんだ。マミさんは追いつけなかった」
マミの声も銃声も聞こえなかったし、これだけ膨大な量の魔力でつくられた虫が動いている気配も感じ取れなかった。
何故だと自問し、すぐに自答する。同じだ。正に今、己が恭子を縛っている魔法と同じだ。
「お父さんって言葉に、君は弱い」
「アタシまで侵そうって言うのか」
己が接触したならば、相手もまた接触しているのだ。
こちらが感覚を奪ったように、恭子もまた、こちらの感覚を奪おうとしている。
「マミさん、もがいてるよ。悲鳴を上げた口にイモムシが詰まって……」
耳を貸すな、仲間を信じろ。杏子は自分に言い聞かせる。
「彼女ひとりで切り抜けられるって思うの? それは虫が良すぎないかい?」
意思こそ魔法の推進力。感情を乱されれば、意思は揺らぎ、魔法は解ける。
「虫の報せは何て言ってる?」
答えてはいけない。理性が警告している。
「あの虫の目的は何だと思う?」
知るか。
「いいの? 杏子さん、本当にいいの? 見ない虫は内に増えるよ。目をそらしても消えないよ」
眼球の裏で、きりきりと弦が引き絞られる感覚。
虫の気配が変化していくのが判る。硬く硬く。蛹だ。蛹になっていく。蛹の背が開く。蛹は羽化する。
種の保存は、全ての生きとし生ける者の命題。目的。
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