834:すけこ☆マギカ[sage saga]
2011/11/06(日) 08:06:02.91 ID:p4laV2rSo
気づけば、佐倉杏子は、空を見ていた。
上体が仰向けに地面へと倒れこんだので、瞼を開いていれば、見ざるを得なかった。
ぶ厚い雨雲が広がるばかりの、空。
空というのは、青いはずじゃないか。杏子は不満に思う。
青が見たかった。
こんな色はダメだ、と断定する。
暗いばかりの空の色も、沈みそうに濡れた街の色も、腹腔から突き出た骨の色も、ぶちまけられた臓物の色も。
いらない。
青が見たい。
杏子は世界から目を背け、瞼を閉じた。
代わりに、マントの少女が目を開く。
彼女は見る。地面を這う虫を見る視線で、ぐずぐずに汚れた着流しのファヴェッタを見る。
「……まぁ、勝てるとは思わなかったんだけど」
それがミミズの遺言になった。
一つのメアリは『イエス』のメアリ。
一つのメアリは『ノー』のメアリ。
だが、双方とも喰われてしまった今、残った彼女は何であろう。
佐倉杏子の腹からのメアリ・マキナ『月不見の花の姫君』。
彼女は、空を見上げた。止まない慟哭を続ける魔女を、見上げて、一言。
「あ、そういうことなの」
見下げるように。
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