過去ログ - 律「「復讐しよう」と唯は言った」
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20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県)[sage]
2011/05/15(日) 02:02:56.71 ID:tndRPGhQo

――そうして時は流れ、新年度が近づく。
大学の状況はというと、私とムギは立派に留年確定。澪と梓は普通に進級しそう。そして驚いていいのかわからないが、憂ちゃんも留年確定。
これで来年度は私と唯と憂ちゃんが大学一年。ムギと梓が二年。澪が三年となる。ひとりぼっちの澪が泣けば面白かったのだが、澪は澪で唯が眠ってから驚くほどの精神的成長を遂げており、泣くことはなかった。
澪は今やバンドサークルの中心人物だ。有名人であり、プレッシャーも責任も大きい立場なのだが、それを撥ね退けるほどの強さ、逞しさを持っている。
……なぜ、そんなにも成長したのか。理由など尋ねるまでもないだろう。自分と比べると泣きたくなるけど。

唯「っていうか私、まだ大学に籍あるの?」

律「奇跡的にな。さわちゃんとムギのおかげだな」

唯「……ムギちゃん、そういうのイヤそうなのに」

律「愛されてるな、お前」

唯「そうだね……」

律「…ムギは留年も確定したことだし、復讐の対象からは外そうと思うんだ」

唯「りっちゃんがそう言うなら、私はいいよ」

律「唯だって、そこまで積極的に復讐したいわけじゃないだろ?」

私の意見に流されるとは、そういうことだ。
思ったとおり唯は一つ頷き、しかしそれでも言葉を続ける。

唯「でも、全てを無かったことには絶対にしない。澪ちゃんとあずにゃんの選択を、私は許せない。二年の重み、思い知らせてあげないと」

……唯の恨みは私にはよくわかる。どうも私より唯の方が熱くなっているような気はするが、私も唯も『見捨てられた』立場にあるのだから。
とはいえもちろん、澪達の言い分もわかる。理解はしている。
澪達は澪達なりに、よくある『イイ話』風に、唯の気持ちを考えた。過去には囚われず、先に進もう、と。
……だがそれは、よくある『イイ話』の場合は、決して唯は目覚めないのだ。あるいは唯が既に死んでいないと成立しない。
要するに、澪達は唯を『二度と目覚めない』と、死んだも同然と見捨てた形になる。目覚めた今となっては所詮結果論にすぎないのだが。
……すぎないのだが、なまじ『見捨てきれなかった』私がいるせいで、澪達は唯にとって『自分勝手』と映ってしまうのだろう。唯と私の温度差は恐らくここにある。
もしも私が澪達と共にあり、目覚めた唯が一人、後から追いかけてくるカタチの話なら、唯は純粋に努力するだろうし、私達は皆で待つし、皆でフォローする。よくある『イイ話』になっていたはずだ。
私が今のままだとしても、いっそ唯が目覚めなければ、澪達は『悲しい過去を背負ったバンド』として有名になるし、私と唯が復讐を誓うこともなかった。なんにせよ『イイ話』だ。

まぁ現実を見ると、私は落ちぶれていて、澪達は充実した毎日を送っている。結局は『イイ話』の選択のほうが、人は幸せになれるのだろう。
だから、間違っているのは私で、きっと唯も間違ってて。梓と澪が正しくて。それだけの話。たったそれだけの。
でも、それでも私は、安堵しているんだ。

唯の恨みを買わなかったことに。


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