過去ログ - 御坂「幸福も不幸も、いらない」
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15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/05/22(日) 19:57:33.49 ID:LrbQxZtRo
「目、覚めた?」

視界の外、横たわるベッドの脇から掛けられた声に御坂は首だけを緩慢に動かし視線を向ける。

金髪の少女がそこにはいた。

長い髪の少女だ。
頭に乗せたベレー帽から零れる金色の髪はゆるいウェーブを描き肩を撫で、背筋へと流れている。
御坂の眠っていた大きなベッドの横、高級そうな木椅子の上で膝を抱えて彼女はこちらを見ていた。

蹲るような格好。ともすれば足とスカートの間から下着が見えそうですらある。
少しでも恥じらいがあるならば年頃の少女のする事ではないだろう。
しかし彼女は気にする素振りも見せず抱えた膝の上に頬を乗せ、御坂と顔の向きを合わせる。

「どう? まだ――眠っていたい?」

金髪の少女は微かに笑むとそんな事を言った。

「結局、アンタがそうしたいなら私がそうさせてあげるわよ。ずっと、ずーっと、幸せな幻想に浸らせてあげる。
 現実なんて直視するだけで目が潰れちゃいそうだもの。それなら目を瞑っちゃって甘い夢の中をたゆたってた方がきっと幸せよ?」

「……夢……?」

「そ。一炊の夢って言葉があるでしょ? 夢の中では時間は永遠に存在する。
 人の脳なんてどんなスパコンだって敵わない超高性能演算機よ。
 結局、それにかかれば一瞬の間にだって一生分の時間を過ごせる訳よ。
 死ぬまで眠り続けたとして、その一生の間にどれだけの人生が送れるかしらねぇ?」

彼女はどこか自嘲的に、歌うように言葉を紡ぐ。

変わらず微笑んだまま。

けれどそれはどこか――仮面のように見えて。

顔を真っ白に塗ったサーカスのピエロを思い出す。
どんな事があっても笑っていて滑稽におどけてみせる道化師。
けれどその目の下には大抵、涙の模様がひとしずく描かれているのだ。

その小さな模様が目の前の金髪の少女の頬にも描かれているように見えて――。


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