16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/05/22(日) 20:09:54.04 ID:LrbQxZtRo
「でも……、……」
言葉を紡ぎかけて御坂は口篭る。
でも、の後に続く言葉。
どんなに幸せだろうと夢は夢でしかない。
現実に生きる人々にとって泡沫の幸福は憧憬こそしても身を委ねてはいけない。
甘い蜜で心を蝕む幻想は性質の悪い悪夢だ。
一度飲まれてしまえば二度と目覚める事はない。
それでもその蜜の海を漂っていたいと思ってしまうのは――。
「……」
でも、と口には出さぬものの思考の中で再度の否定が生まれる。
きっと彼女の言う通りにした方が幸せなのだろう。
けれど何かがその邪魔をする。
何か。
誰か?
思考に靄が掛かっているようだった。
寝起きだからだろうかと考えて否定する。だとしても思い出せないはずがないのだ。
それは自分にとって何よりも大切な――、
大切な? 何が?
思い出せない。
絶対に忘れてはいけない、忘れようと思っても忘れられないはずの存在がそこにはあるはずなのに。
記憶のアルバムの中でそこだけが塗りつぶされたように思い出せない。
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