977: ◆IsBQ15PVtg[sage saga]
2012/05/04(金) 23:13:35.33 ID:VOY4ySMs0
歩いた後に――血痕が垂れていたのだから。
着ている上着やスカートは、あちこちで切り裂かれていて。
その下から――何かで刺されたのだろうか――ばっくりと開いた切り傷が覗かせていた。
そして、少しずつだけれども――血が染み出していた。
血はそのまま、彼女のほっそりとした手や足を伝わって――床へと絶え間なく垂れていたのだった。
とりわけ、右腕に出来た傷は、素人目でも分かるぐらいの深い傷だった。
今は白い布で巻きつけているものの、そこからは血がなおもあふれ出ていた。
覆っている布はもちろん、二の腕の傷を覆う布や、羽織っている白いジャケットの袖さえも赤く染めていた。
左手で何とか傷口のあたりを押さえるものの――止まる様子はない。
さらに言うなら、骨も折れてしまっているように思えて――動かすことなんて到底無理だといえそうな激痛が、右腕を支配していたのだった。
痛さという激しい苦痛のあまり、顔を歪ませながら。
吐く息は弱弱しくなりながら。
足元はもつれて、時折倒れそうになりながら――も。
気力を振り絞って、前へ前へと朽ちた床を踏みしめていた。
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